発達障害の方は疲れやすいって本当?疲れやすい原因と対処法を解説

発達障害のある社員が「人より疲れやすい」と感じているケースは少なくありません。
本コラムでは、その理由となる発達障害特有の要因と、疲れやすさを軽減するための対処法をわかりやすく解説。
中小企業の経営者や管理者の方々が、発達障害のある社員をサポートし活躍してもらうために役立つ情報をお届けします。
発達障害の特性による困りごとは本人の怠けや甘えではなく生まれつきの脳機能の差によるものであり、周囲の理解と環境調整が何より重要とされています。

臨床の現場でも発達障害のある人から「すぐ疲れてしまう」との訴えは大変多く報告されており、疲れやすさへの理解と対策は職場定着の大きな鍵となります。

発達障害のある人が疲れやすいのはなぜ?主な原因

発達障害のある人にとって、「他の人より疲れやすい」という悩みはよく知られています。その背景には、発達障害の特性に起因する様々な要因が存在します。
ここでは代表的な原因を5つ紹介します。

 

無理に周囲へ合わせようとしてしまう

職場の人間関係や暗黙のルールに無理に合わせようと頑張りすぎることで、当事者は大きなエネルギーを消耗しがちです。
例えば、自閉スペクトラム症(ASD)の社員の場合、昼休みの何気ない雑談ひとつ取っても「誰に・何を・いつ話すべきか」と頭をフル回転させて場に溶け込もうとします。
一見すると他の社員と変わらず普通に過ごしているように見えても、実際には自分の特性に反する行動を続けるため本人には大きな負担がかかっているのです。

また、「ちゃんとしなければ」「期待に応えなければ」と過剰に適応しようとするあまり、必要以上に自分を追い込んでしまうケースもあります。
このように周囲に合わせるための無理が積み重なると、心身が疲弊し「疲れやすい」状態になってしまいます。
これはいわゆる「過剰適応」と呼ばれる状態で、無理を続けると精神的な不調(うつ病やパニック障害などの二次障害)に繋がる恐れも指摘されています。

感覚過敏など感覚特性による疲労

発達障害のある人の中には、音や光、匂いなどの刺激に非常に敏感な「感覚過敏」の特性を持つ方がいます。
オフィスでは何とも思われないエアコンの微かな音や蛍光灯の光でも、当事者にとっては我慢できない強い刺激となり得ます。
実際に、周囲には気にならない些細な物音や照明でも本人は神経をすり減らし、特に何もしていない状況でもひどく消耗してしまうことがあります。

自閉スペクトラム症(ASD)の方に感覚過敏が多いとされますが、刺激への感じ方は人それぞれです。
自宅のように自分で環境を選べる場所とは異なり、職場では不快な刺激を完全に避けることは難しいため、常に緊張を強いられて疲労が蓄積してしまいます。
職場でこうした強い刺激に晒され続ければ、それだけで通常以上に疲労が蓄積してしまいます。

 

集中しすぎ・活動量が多すぎてエネルギー消耗

発達障害の特性として、物事に極度に集中して「過集中」と呼ばれる状態に陥りやすい人がいます(これは特にASDの方によく見られる特徴です)。
一旦集中のスイッチが入ると、時間や周囲が見えなくなるほど作業に没頭し、休憩を取るのも忘れてしまうことがあります。
その結果、後になって集中が途切れた瞬間にドッと疲れが押し寄せて動けなくなってしまうことも少なくありません。
本人が自分の疲れに気づかず無理を重ねてしまうケースも多いため、周囲が休息の声かけをするなど注意が必要です。

また、注意欠如・多動症(ADHD)の傾向がある人は、身体をずっと動かし続けたり頭の中で考えが暴走したりと活動量が人より多く、それが肉体的・精神的な疲労に直結します。手を抜いたり「適当に済ませる」ことが苦手で、完璧を目指して根を詰めすぎてしまう傾向も。
仕事熱心で責任感が強い人ほどこうした頑張りすぎに陥りやすく、その裏で心身には大きな負担がかかりエネルギーを大量に消耗してしまいます。

 

睡眠の質やリズムの問題

睡眠にまつわる問題も、発達障害のある方の疲れやすさに深く関係しています。
特にADHDの傾向がある人は、夜なかなか寝付けなかったり朝起きられなかったりと、睡眠障害を抱えているケースが多いとされています。
十分に眠れない日が続けば日中にエネルギーが確保できず疲労感が強まるのはもちろん、逆に過剰に長く眠りすぎてしまい生活リズムが乱れる場合も。

睡眠のリズムや質が安定しないことで日中のパフォーマンスに影響が出て、通常より疲れを感じやすくなってしまいます。
不眠や過眠以外にも、不安や感覚過敏のせいで熟睡できないといったケースもあり、睡眠トラブルは疲労の大きな原因となり得ます。

身体の使い方の不器用さによる疲れ

一部の発達障害のある方は、運動機能の特性から日常的な動作に過度なエネルギーを要してしまうことがあります。
不器用さゆえに人より余計な力を込めて物を持ったり、ペンを強く握りすぎて肩が凝ってしまうなど、些細な動作でも疲労が蓄積しやすいのです。
靴ひもを結ぶ動作に時間がかかったり、電車のつり革を必要以上に強く握って腕が疲れてしまう例も。
また、ADHDタイプの人では身体が常に動いている(多動傾向)ため、本人も気づかないうちにスタミナを消耗してしまう場合があります。

このように身体の使い方のクセや不得手さも、疲れやすさの一因となります。
なお、ここで挙げた原因以外にも、例えばマルチタスクへの苦手さによるストレスや不安症の併存など、人によって疲れやすさの要因は様々。
まずは本人がどんな場面で疲れを感じやすいのか周囲も把握し、原因に応じた適切な対策を講じることが大切になります。

 

発達障害のある人が感じる疲れやすさへの対処法

発達障害に起因する疲れやすさは、適切な工夫と周囲のサポートによって軽減が期待できます。
ここからは、社員本人が実践できる対処法と企業側で講じる配慮策を合わせて紹介します。現場で働く方とサポートする側が協力し、疲れにくい環境を整えていきましょう。

 

刺激を減らし快適な環境を整える

発達障害の特性による疲労を和らげるには、まず疲労の原因となる刺激を可能な限り減らすことが重要です。
感覚過敏のある社員には、耳栓やノイズキャンセリング機能付きヘッドホンの使用を許可する、デスク周りの照明を調整する、席替えで静かな場所に移すなどの対策が有効。

場合によっては在宅勤務を活用し、自宅で集中して取り組める環境を選択できるようにするのも一案でしょう。
職場によっては難しい対応もありますが、例えばフロア全体の照明を少し落とす、騒音の出る機器を離れた場所に配置するといった工夫で職場環境自体のストレスを下げることもできます。
本人の感じ方に合った道具や環境調整を周囲が受け入れることで、当事者の働きやすさをフォローできます。

 

定期的に休憩を取りリフレッシュする

過集中になりやすかったり、自分の疲労に気づきにくい社員には、意識的に休憩を取らせる仕組みづくりが必要です。
具体的には、1時間に5分など定期的にアラームを鳴らして強制的に休憩を促す方法が効果的だとされています。
企業側でも、小休止を取りやすい職場風土を作ったり、業務スケジュールに余裕を持たせて休憩時間を確保することが大切です。
また、集中しすぎてしまう人には「あらかじめ○時になったら一度報告してほしい」と声をかけて区切りを作ることで、適度に休憩を入れやすくする工夫も有効でしょう。

休憩の際には軽いストレッチや散歩、好きな音楽を聴くなどリラックスできる過ごし方を取り入れるよう促すと、心身のリフレッシュにつながります。
さらに、体力面で不安がある社員に対しては、必要に応じて昼休みに仮眠を取れるスペースを用意したり、体調に合わせて勤務時間や日数を調整する柔軟な対応も検討しましょう。例えば、最初は短時間勤務から始め徐々に勤務時間を延ばすといった段階的な配慮が効果的だとされています。

 

本人が「他の人は休まず働いているのに、自分だけ休むのは申し訳ない」と感じてしまう場合もありますが、実際には周囲の人たちも上手に息抜きをしながら働いているものです。休み方を工夫しながら業務を続けることは決して怠慢ではなく、長く働き続ける上で必要なスキルだということを周知しておきましょう。

無理に周囲へ合わせなくてよい職場づくり

発達障害のある社員が自分を過度に抑え込まず働けるよう、職場環境にも配慮が必要です。休憩時間の雑談や終業後の飲み会など「付き合い」に無理に参加しなくても問題ないことをあらかじめ伝えておくと、本人は安心して自分のペースで過ごせます。
また、本人が落ち着けるように昼休みに一人になれる静かなスペースを確保するなどの配慮もできれば望ましいでしょう。
仕事上必要なコミュニケーションに関しても、曖昧さを減らして明確に伝えることで当人の負担を軽くできます。

 

「社会人だから◯◯すべき」といった固定観念を押し付けず、周囲の同僚も多様な働き方を認め合う文化を育てましょう。
特に管理職の方は、その人なりのやり方で仕事の成果が出ているのであれば、細かいスタイルに干渉しすぎないことも必要です。
周囲が個々人の特性を正しく理解し、「違い」を許容する職場こそ、発達障害のある社員が無理なく力を発揮できる環境と言えます。
必要に応じて発達障害についての社内研修や情報共有を行い、社員全員が正しく理解できるようにするのもよいでしょう。

 

睡眠や生活リズムへのサポート

睡眠の問題から疲労が生じている場合には、生活リズムを整える支援も視野に入れましょう。
社員本人には就寝前のルーティンを整えることや、リラックスできる音や照明を取り入れるなど質の良い睡眠の工夫を促します。
企業としては、朝が苦手な人に少し遅めの出社を認めるフレックスタイム制度の活用や、在宅勤務の導入など勤務形態の柔軟化も有効です。

どうしても睡眠不足が続くようなら、産業医や専門医に相談するよう勧め、必要に応じて治療や服薬のサポートを受けることも検討してください。
睡眠は疲労と切り離せない要素のため、勤務体系や健康管理の面で長期的な視点から支援していくことが大切です。

業務の割り振り工夫と得意分野の活用

発達障害のある社員が疲弊しにくくするには、その人の強み・弱みを踏まえた業務の割り振りもポイント。
細かな書類整理が極端に苦手な社員にはデータ入力や企画業務を中心に任せ、代わりに他の社員に得意な細部チェックを担当してもらうなど、チーム内で補完し合う体制を作りましょう。

手先の不器用さがある場合は無理に克服させようとせず、必要ならば補助ツールの使用(例:メモが苦手なら個人用PCでの記録を許可する等)を検討してください。また、完璧主義で一人で抱え込みがちな社員には、あらかじめ成果物のゴール水準を上司とすり合わせたり、途中で進捗報告させるルールを設けることで、適度なところで仕事を区切れるよう配慮します。
業務量そのものも、本人の処理スピードや体力に見合った範囲になるよう調整が必要です。こうした配慮は「合理的配慮」として法的にも求められる正当な支援であり、決して特別扱いや甘やかしではありません。
むしろ社員が能力を発揮できる得意分野に注力し、不得手な部分で過度に消耗しないようにすることは、結果的に会社全体の生産性向上にもつながります。

 

合理的配慮については以下の記事も参考にしてください。
「ADHDへの合理的配慮とは?障がい者雇用で企業ができること」

まとめ

発達障害のある方が「疲れやすい」のには様々な理由がありますが、その多くは本人の努力不足ではなく特性に由来するもの。
企業側がその特性を正しく理解し、必要な配慮を行うことで当事者の負担は大きく軽減されます。
また、必要に応じて地域の障害者職業センターなど専門機関に相談し、客観的な視点から職場環境の改善策を提案してもらうのも有効でしょう。

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