転職を成功させ、新しい職場で力を発揮するためには「ポータブルスキル」が鍵となります。
ポータブルスキルは、あなたが持つユニークな価値を示し、どの業界にも適応できる力を身につける手助けとなるものです。
一体、ポータブルスキルとは何でしょうか?そして、なぜそれが転職において重要なのでしょうか?
この記事では、転職を考えているすべての人に向けて、ポータブルスキルの魅力とその身に付け方をご紹介します。
ポータブルスキルとアンポータブルスキル
まずは、ポータブルスキルとアンポータブルスキルについて見ていきましょう。
ポータブルスキルとは?
ポータブルスキルは、ある職場や業界から別の職場や業界へ持ち運び可能なスキルのことです。
ポータブルスキルは、個人のキャリアにおいて非常に価値があり、多様な職種や環境での適応能力を高めます。
例えば、コミュニケーション能力、問題解決スキル、タイムマネジメント、そしてリーダーシップなどがあります。
これらのスキルを磨くことで、新しい職場での適応がスムーズになり、さまざまなチームやプロジェクトでの効果的な貢献が期待できます。
ポータブルスキルは転職活動においても強力な武器となります。
履歴書・職務経歴書や面接の場で、これらのスキルを明確にアピールすることが、自身の転職市場価値を向上させ、求人企業からの評価も高まるでしょう。
アンポータブルスキル
ポータブルスキルの対極にあるスキルとして、アンポータブルスキル(テクニカルスキルとも)というものがあります。
アンポータブルスキルは、特定の職場や業界に特化した、他の環境に容易に移行させることが難しいスキルを指します。
アンポータブルスキルは非常に専門的なスキルであり、特定の業務に深く関連しているため、他の職種や業界に転職する際に直接的な利点が少ない可能性があります。
例えば、特定のソフトウェアの操作方法や、独特の業界スキル、特有の業務プロセスなどがアンポータブルスキルに含まれます。
これらのスキルは、現在の職場で非常に価値があるかもしれませんが、新しい職場や業界での適用が難しい場合があります。
転職を考える場合、アンポータブルスキルに依存せず、ポータブルスキルを磨くことも重要です。
ポータブルスキルを磨くべき背景
ポータブルスキルが重要だと言われているのには、いくつかの大きな理由があります。
日本企業は終身雇用が主流
現代の日本では、まだまだ終身雇用で成り立つ企業が多くあります。
企業が終身雇用を導入している理由は、「労働力の確保」と「中長期的な人事戦略」という二つの理由があります。
労働力の確保とは文字通り、イレギュラーな人材不足に陥らないように、あるいは万が一陥ったとしても最低限の労働力を社内に抱え込んでおくことです。
事業展開、事業戦略を計画したとしても、そこに割く人員がいないことが理由で実行に移すことができない場合もあります。
このように、チャンスを逃さずに事業を行うためには最低限の人的リソースを確保する必要がありました。
また、中長期的な人事戦略を考えて、企業理念を理解した人材を中長期的に育成していくことを目指している企業もあります。
終身雇用制度であれば、従業員が定着すれば社内での長期的なキャリア形成に大きなメリットとなるでしょう。
アウトソーシングによる人材確保も主流に
しかし、これら二つの終身雇用制度を採用する理由は、インターネット技術の発展、人材のアウトソーシング概念の形成によって徐々になくなりつつあります。
今では必要な業務・仕事だけをスキルのある人材に任せることができます。
ネット環境さえ整っていれば、外部に人的リソースを確保することが昔に比べてはるかに容易となりました。
転職も主流に
さらに、労働市場でも一つの企業でキャリアを積み上げることよりも、様々な企業に転職を繰り返しながら自分のスキルを磨く人たちも増えています。
同じ業種内で転職する場合、専門スキルは転職を成功させるうえで重要です。
異業種への転職の場合も、最低限の知識が要求されることもあるので、アンポータブルスキルはやはり重要でしょう。
しかし、いずれの転職ケースを考えたとしても、企業が違えば文化が違います。
仕事のやり方によっては自分の専門スキルが活かしきれないということもありえます。
アンポータブルスキルは今の会社では役立つスキルかもしれませんが、他の企業では通用しない可能性もあり、最初からスキルを積み立てる必要があるのに対して、ポータブルスキルであれば一度習得すれば無価値になることはありません。
今の会社がこの先何十年も続けられる保障はどこにもありません。
転職を考えていない人であっても、ポータブルスキルを磨いて損することはないでしょう。
転職にポータブルスキルが有利にはたらく理由3選
転職時にはポータブルスキルをもっていた方が有利になります。
ポータブルスキルが転職に有利となる理由についてまとめました。
①職種や業界の変化に対応できる
転職市場は日々変化しており、新たな職種や業界が次々と出現しています。
ポータブルスキルを持っていると、このような変化に柔軟に対応できるのです。
たとえば、特定の業界での経験が豊富でも、他の業界に移動する際に必要なスキルが不足していると、転職は難しいものとなります。
しかし、ポータブルスキルはどの業界でも活用できるため、スムーズに転職・適応できるでしょう。
②転職後の環境変化にも対応できる
転職が成功したかどうかは、採用されたかどうかで決まるのではなく、採用後の職場環境、報酬などを総合して決めていくものです。
転職直後には新しい職場文化、チーム、プロジェクト、業務フローにスムーズに適応する力が求められます。
ここでポータブルスキルが大きな強みとなります。
特に、コミュニケーションや問題解決、時間管理などのスキルは、環境の変化を乗り越え、新しい職場でもすぐに結果を出すための強力な武器です。
ポータブルスキルの有無は転職後にその転職が成功だったのか振り返るときの成功確率を高めてくれるでしょう。
キャリアの柔軟性・安定性が広がる
ポータブルスキルを身につけていると、様々な職種や業界での働き方が可能になり、選択肢が広がります。
また、未経験の職種や新しい業界にもスムーズに適応できる可能性が高まり、市場価値も向上します。
これにより、自身のキャリアをより自由に、そして戦略的に築き上げることができるのです。
また、終身雇用が難しくなり転職が主流となる現代では、どこでも通用するスキルを磨くことが結果的に安定をもたらすことにつながります。
「転職や雇用の流動性」と「安定」という言葉は反対のように思われますが、これからはスキルを磨き、どこでも通用する人材であることこそが安定に最も近い状態と言えそうです。
一般的なポータブルスキル
雇用の流動化を促すために、厚生労働省も転職には前向きであり、ポータブルスキルの重要性についてもまとめています。
ここでは、一般的なポータブルスキルを解「仕事のし方」と「人との関わり方」という二つの観点からまとめていきます。
(出典:ポータブルスキルの要素・厚生労働省より引用)
仕事のし方
仕事の内容は異なっても、大まかな仕事の流れというのはどの企業でも本質的には同じで、それはポータブルスキルです。
仕事の流れは、大まかに課題設定→計画立案→計画実行の順に流れていきますが、それぞれのスキルの詳細を確認しておきましょう。
課題設定
課題設定スキルには
●分析力
●傾聴力
が必要です。
課題を設定する前に現状がどのような状態になっているのか、どのように仕事を進めていけばいいのか、現状をしっかりと分析することが重要です。
自分たちのリソースの分析、市場の顧客分析など、分析の対象は多岐にわたります。
分析の際にはチームメンバーの意見を聞くことや、ときに専門家の意見を聞くことも必要になるでしょう。
そのときに重要なのは傾聴力です。
分析をしながら自分たちの課題は何であるのかを明らかにし、クリアすべき課題を明確に設定していくことになります。
計画立案
分析が終わったら、具体的に仕事を進めるための手順を考えることになります。
これが計画立案です。
計画立案には、
- 業務の細分化スキル
- 期限設定スキル
- 業務割り当てスキル
- リスクマネジメントスキル
等が必要です。
計画の立案では、設定した課題をクリアするための業務をつくり、その業務を細分化してそれぞれに割り振らなくてはなりません。
また、仕事には期限があります。
期限がなく、やってもやらなくてもいいと思えるものは仕事とは呼べないでしょう。
期限の設定はリスクマネジメントスキルとも関係します。
障害やトラブルが発生したときに、その解決にどのぐらいの時間がかけられるのかなど、計算しながら仕事の計画を細分化して組み立てていくスキルは、どのような仕事をするにあたっても重要です。
計画実行
組み立てた計画を実行に移す段階です。
これには、
●コミュニケーションスキル
●進捗管理能力
●軌道修正能力
が必要です。
計画を実行していく中でコミュニケーションスキルは必要不可欠です。
周囲の人たちと情報を共有しながら、得意な部分を活かしながら業務を進めていくでしょう。
仕事の期限を確認しながら進捗管理をしながら、必要に応じて軌道修正するスキルも求められます。
人との関わり方
人と関わらずに仕事をすることは難しいでしょう。
社内であれば上司・部下、社外であれば顧客・クライアント、取引先になるでしょう。
上司
社内で上司に対して自分自身が求められるスキルとは
●社内でのプレゼン資料の作成・発表スキル
●報連相のスキル
です。
企画説明など、社内でも社外でも資料を作成してそれを伝えるスキルは重要です。
要点を分かりやすく、簡潔にまとめて相手に必要な情報を伝えることはお互いのコミュニケーションコストを削減することにもつながります。
部下
会社で仕事をするにあたって、多くの人は上司であるとともに部下でもあります。
部下への対応は自分が「部下」であるということを客観視できればどのようなスキルが必要か見えてきます。
●傾聴力
●マネジメントスキル
●コーチングスキル
傾聴力を持つと、部下は自分の考えや意見が評価されていると感じ、モチベーションの向上や問題解決に繋がります。
一人一人のスキルや特性を理解し、それぞれが最も効果的に働けるように計画や調整を行うためにはマネジメントスキルやコーチングスキルも重要です。
社外対応
企業の売上・利益に直接的な影響を与えるのが社外取引。
これを成功させるためには、
●コミュニケーション能力
●分析力
●提案力
などが必要になります。
相手のニーズを掘り起こすようなコミュニケーションを取りながら顧客を分析しながら提案していく力はどのような業界でも通用する営業スキルです。
転職で有利に!具体的に磨くべきポータブルスキル3選
「仕事のし方」「人との関わり方」で見てきたポータブルスキルはどれも重要ですが、抽象的でつかみきれないところも多かったはずです。
この項目では、ポータブルスキルをより具体的に決め、磨くべき内容を3つに絞って紹介していきます。
ライティングスキル・タイピングスキル
ライティングスキル・タイピングスキルはどの業種、どの企業で仕事をするにしても、あって困ることはありません。
仕事の中で文章スキルは様々な場面で必要になります。
日々の日報、企画書や報告書、メール、チャットツールでの簡易なやり取りなど、文章スキルなしで仕事を進めることはもはや不可能というレベルで使います。
書店でもライティングに関係する本は多く並んでいることに気が付いている方も多いのではないでしょうか。
それだけライティングスキルは重要ということです。
また、同じ報告書やメールでのやり取りをするのであれば、時間は短縮できた方がスキルは高いと言えるでしょう。
ここで役立つのがタイピングスキルです。
ライティングスキルにタイピングスキルが加わればまさに「鬼に金棒」。
スキルの磨き方としては、「いい」と言われている文章の構造を真似して、そのロジックで文章を書いてみることをおすすめします。
スピードは意識せずにクオリティを重視することが大切。
完成度の高い文章が作成できたと思える時から徐々にスピードを意識するといいでしょう。
タイムマネジメントスキル
「仕事のし方」の項目で解説した内容の本質的な部分はタイムマネジメントスキルに集約されます。
時間管理とも呼ばれますが、タイムマネジメントスキルの神髄は「優先順位付け」です。
緊急度と重要度のマトリックスが有名ですが、成果が出せる人たちはこのマトリックスを上手く活用して仕事を進めていることが多いです。
意識的であれ、無意識的であれ優先順位をしっかりと付けながら仕事をしています。
仕事で成果をあげる人は重要度を軸にして仕事の計画を立てます。
目の前の期日に迫られて日々の仕事をこなしてしまっていると感じる場合には、仕事全体を俯瞰して重要度を大切にして仕事の優先順位をつけることをおすすめします。
上のマトリックスであれば、
- 「important and urgent」(重要で緊急)
- 「important but not urgent」(重要だが緊急度は低い)
- 「not important but urgent」(重要ではないが緊急度は高い)
- 「not important and not urgent」(重要でなく緊急度も低い)
という優先順位をつけます。
2と3は難しく、重要でない仕事の締め切りは守らなくていいという意味ではなく、上記のような流れを根底において仕事の計画を立てることが重要。
タイムマネジメントスキルを身に付けるためには、日々の仕事がマトリックスのどこに位置しているのかを考えるようにしてみましょう。
やるべきことが多く、手が回らないと感じるときこそ仕事の順番を意識してみることが大切です。
「こんなことを気にするぐらいなら、仕事にとりかかった方が早く終わる」と思う気持ちを抑えて試してみてください。
最適なエネルギー配分を行うためには優先順位をつけることは欠かせません。
会計スキル
事務職や経理担当でなくても必須にしたいスキルが会計スキル。
これは会社の業績を数値ベースで読み解くことができるスキルです。
一言で表現すると「簿記」の知識ということになります。
どのような仕事をするにしてもお金の流れは発生します。
バックオフィス業務であれば売上は立たなくても支出はありますし、コア業務であれば売上も支出もあるでしょう。
このようにお金の流れを意識して仕事をするためにも会計スキルは必須です。
仕事の結果報告の際にも、
「〇〇をして支出を〇〇円削減できて利益率が〇〇になりました。」
「〇〇の項目を、〇〇をすることで改善できました。」
このような報告ができる人は仕事ができる人、というイメージがもてるのではないでしょうか。
会計スキルを簡単に身に付けるためには簿記の勉強が早いのですが、自分の勤め先のPL数値を見つめて考えるだけでも考え方の基礎は身に付くので、閲覧できる場合にはおすすめです。
転職にポータブルスキルを活かすには?
ポータブルスキルはアンポータブルスキルと違って、可視化する方法が難しいところがあります。
転職にポータブルスキルを活かすためにはより具体的に証明することが大事です。
自分のポータブルスキルの明確化と分析
自分のスキルを洗い出し、それらがどのように異なる企業、業界や職種で活かされるかを理解しましょう。
具体的なスキルのリストアップから始め、それぞれのスキルがどのように価値を提供できるかを評価します。
顧客対応をメインに行う業種への転職を検討する場合には、「前職では顧客からのクレームの担当を行っていた」のであれば、クレームの処理スキル・顧客との調整スキルが身に付いていると客観的にアピールできそうです。
自分のポータブルスキルが明確にしながら相手のニーズにしっかりと合っているものを見つけていくことを繰り返しましょう。
数が多ければいいというものではありません。
「自分の強み」を一つでもしっかりともっている人の方が、それについて語れる内容にも深みが増します。
転職に向けてという観点からは、リストアップ時には複数行いながらも、最終的には2~3つに絞ることが推奨されます。
ポータブルスキルの証明が大事
ポータブルスキルは点数化できないものが多く、客観的にそのスキルの高さを判断しにくいのも特徴です。
しかし、この客観的証明のステップは無視できません。
点数化されないポータブルスキルの証明において、最も有効な方法は第三者から判断してもらうことです。
転職活動では多くの場合、この第三者は転職エージェントになるでしょう。
転職エージェントは転職希望者と企業の間に入り、お互いの事情をよく知れる立場にあります。
転職エージェントは転職活動を応援する立場であると同時に企業を応援する立場でもあるので、単に人材採用だけが上手くいけばいいと考えているわけではありません。
採用活動をしている企業の今後の利益も考え、慎重に判断する立場であるからこそ、そのような転職エージェントが判断したポータブルスキルの客観性は担保されたと自信をもつことができます。
ポータブルスキルと企業のミスマッチについても指摘してくれるので、効率よく相性の良い転職先を見つけることにも役立つでしょう。
ポータブルスキルのアピール方法
最後に、ポータブルスキルをアピール例文について紹介します。
事務職の場合
以前は、さまざまな管理職として活動しており、経理や総務、営業などが含まれていました。
タスクが不規則だったため、ミスや情報の欠落が時々起こりました。
その問題を解決するために、計画的に年間、月間、週間のスケジュールを整理しました。これにより、作業の負荷を適切に管理し、事前にタスクを整理することが可能になりました。
部門間での協力も促進し、作業の効率と精度が向上しました。これにより、ミスや情報の欠落が大幅に削減されました。
技術職の場合
開発業務を委託される企業でサーバー関連の技術者として3年活動した後、独自の製品を提供する会社に転職しました。
システムとウェブの開発に関わり、計画から管理まで幅広い役割を担当し、多岐にわたる技能を身につけています。
また、開発チームを指導する資格もあり、特にスクラム方式の開発に精通しており、製品マネージャーとしての知識も技術とビジネスの両面で利用しています。
営業職の場合
前職の営業では、他の同僚よりもクライアント訪問の頻度は高かったものの、それが成果に結びつかないという課題がありました。
これを解決するために、私は営業のアプローチに戦略的な改善を試みました。
まず、顧客とのコミュニケーションの段階で、さまざまな可能性を考慮に入れ、事前に複数の戦略を立てるようにしました。
それに基づき、顧客のビジネスに適した提案や解決策を練り、効果的な結果が得られるよう努めました。
顧客のニーズや要望に対する理解が深まり、それに基づいた提案ができるようになり、
提供するソリューションの適切性や効果性が向上し、営業成果の向上に貢献しました。
まとめ:ポータブルスキルを持ち運んで転職活動を有利に進めよう
ポータブルスキルはどの職種・どの業種でも役に立つスキルです。
転職活動時にポータブルスキルをもっていることを証明するのはなかなか難しいですが、転職するにしても、しないにしても役立つポータブルスキルは磨いておいて損することはありません。
今転職を考えていない人も、ポータブルスキルをもっていれば転職が有利になることは間違いないでしょう。
普段からポータブルスキルを意識して仕事に取り組んでみてはいかがでしょうか。
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利用者の特性やスキルセットを詳細に分析し、その強みや価値を明確に評価します。
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