障がい者雇用は義務ではなくチャンス?経営に与えるプラスの影響

障がい者雇用は「義務」として捉えられがちですが、実は企業の成長に貢献する「チャンス」となる側面も持っています。
適切な業務設計や環境整備を行うことで、多様な視点の導入、生産性の向上、企業のブランド価値の向上といったメリットを得ることが可能です。

 

さらに、助成金や税制優遇制度の活用によって、経済的な負担を抑えながら持続的な雇用を実現できます。
本記事では、障がい者雇用が経営に与えるポジティブな影響について解説し、企業としてどのように取り組むべきかを考えます。

障がい者雇用は企業にとって義務か?

結論として、一定規模以上の企業には「障害者雇用促進法」に基づく法定雇用率の達成義務があります。

法定雇用率とは?

日本では、企業が障がい者を積極的に雇用するように定めた「障害者雇用促進法」があり、従業員43.5人以上(2024年4月以降は40人以上)の企業には、一定割合の障がい者を雇用する義務があります。
この割合を法定雇用率といい、現在の基準は以下の通りです。

 

●民間企業:2.3%(2024年4月以降は2.5%、2026年7月以降は2.7%に引き上げ)
●国・地方公共団体:2.6%(2024年4月以降は2.8%)
●都道府県等の教育委員会:2.5%(2024年4月以降は2.7%)

 

例えば、従業員が100人いる企業なら、2~3人の障がい者を雇用する必要があるという計算になります。

義務を果たさないとどうなる?

法定雇用率を満たしていない企業は、「障害者雇用納付金制度」により、1人不足するごとに月額5万円の納付金を支払う必要があります(常時100人超の企業が対象)。
また、行政からの指導が入ることもあり、長期間改善が見られない場合は企業名の公表や是正勧告が行われることもあります。

障がい者雇用を義務ではなくチャンスととらえるべき理由

障がい者雇用は単なる法的義務を超えて、企業にとってさまざまなプラスの効果をもたらす可能性があります。
以下にその理由を挙げてみましょう。

多様性の促進と組織の活性化

障がい者の雇用は、職場に多様な価値観や視点をもたらします。
従業員のバックグラウンドが多様化することで、新しいアイデアや創造的な発想が生まれやすくなる環境が整います。
例えば、バリアフリー商品やサービスの開発において、障がい者の視点を取り入れることで、より実用的で市場ニーズに応えた製品が生まれることがあります。

企業の社会的責任(CSR)の強化

雇用の安定と助成金の活用

障がい者雇用に関する各種助成金や税制優遇制度を活用することで、企業の負担を軽減できます。

●特定求職者雇用開発助成金(障がい者を雇用する企業に支給)
●障害者雇用安定助成金(定着支援や職場環境整備にかかる費用を補助)
●減税措置(障害者雇用に応じた法人税の控除)

これらの制度を活用することで、採用コストを抑えながら長期的な人材確保を実現することが可能です。

社員のエンゲージメント向上

障がい者雇用が進むことで、社内での協力とサポートの文化が根付き、社員のエンゲージメントが高まることがあります。
多様性の尊重と共生を目指す環境は、社員同士の絆を深め、チームワークの向上や社員満足度の向上に寄与。
特に、共感や支援の文化が育まれることで、社員のモチベーション向上が期待されます。

社会的評価と企業の競争力向上

障がい者雇用に積極的に取り組む企業は、社会的に評価されるだけでなく、競争力のある企業としての地位を確立することができます。

特に、持続可能性や社会的責任を重視する投資家やパートナーとの取引において、障がい者雇用の実績が企業選定基準となることがあります。
これにより、企業の競争力を高めることができるのです。

定着率の向上

適切な支援と環境が整備されることで、障がい者の社員の定着率が高まり、長期的な労働力として活躍してもらえることが多いです。
定着した社員は、その経験を通じて職場内でのノウハウやスキルを向上させ、他の社員にも良い影響を与えることが期待されます。

これらの理由から、障がい者雇用は企業にとって単なる義務ではなく、競争力を強化し、社会的責任を果たしながら、持続可能な成長を支えるチャンスであると捉えるべきでしょう。

ADHDの人を障がい者雇用枠で雇用することはできる?

ADHDの人も、一定の条件を満たせば障がい者雇用枠での雇用が可能です。

障がい者雇用枠で働くための条件

障がい者雇用枠で雇用されるためには、「障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)」の取得が必要です。
ADHDは、精神障害の一つとして分類されるため、医師の診断を受けたうえで手帳を取得すれば、障がい者雇用枠での就労が可能になります。

また、手帳の有無にかかわらず、企業によっては「障がい者雇用に準ずる形で特性に配慮した雇用を行う」ことができるケースもあります。

 

ADHDの人を障がい者雇用枠で採用するメリット

企業がADHDの人を障がい者雇用枠で採用することには、以下のようなメリットがあります。

●法定雇用率の達成
ADHDの人が障害者手帳を取得している場合、企業の法定雇用率(2.3%~2.7%)にカウントできる。

●助成金の活用
障がい者雇用を進める企業には、「特定求職者雇用開発助成金」 や 「障害者雇用安定助成金」 など、給与や職場環境整備のための助成金を活用できる。

 

●適材適所での人材活用
ADHDの特性を考慮し、創造力や行動力を活かせる業務に配置することで、企業の生産性向上につながる。

 

企業が気を付けるべきポイント

●本人の希望を尊重すること
ADHDの人が障がい者雇用枠での就労を希望するかどうかは個人の選択であり、企業側が一方的に「障がい者枠で雇用すべき」と決めることはできません。

 

●合理的配慮の提供
障がい者雇用枠に限らず、ADHDの特性に応じた適切な業務環境の整備(タスク管理ツールの導入、柔軟な勤務体制など)が求められる。

 

●業務内容の適正な設定
ADHDの特性上、ルーチンワークや細かい作業が苦手な場合があるため、適性に合った職務設計が必要。

 

障がい者が活躍できる職場環境とサポート体制

バリアフリーな職場環境の整備

身体障がい者にとって、物理的な環境整備は重要です。
段差のないオフィス設計、エレベーターの設置、幅広の通路の確保など、移動しやすい職場環境を整えることで、業務の快適性が向上します。
また、聴覚障がい者向けには、筆談ボードの設置や音声認識ソフトの活用が有効です。

柔軟な働き方の導入

障がいの種類や特性に応じて、在宅勤務やフレックスタイム制の導入が効果的です。
例えば、ADHDや発達障がいの特性を持つ人は、静かな環境のほうが集中しやすいため、在宅勤務が適している場合があります。
また、通院が必要な人に対しては、週数回のリモートワークや、短時間勤務の選択肢を用意することで、働き続けやすくなります。

業務の明確化と適材適所の配置

障がいの特性によって得意・不得意が異なるため、業務内容を適切に設計することが重要です。
例えば、視覚的な指示があるとわかりやすい人には、タスク管理ツールを活用する、短時間で集中しやすい人には、細かく区切った業務を割り当てるなどの工夫が求められます。

また、障がい者本人が希望する業務内容を事前に確認し、適材適所の配置を行うことが、長期的な定着につながります。

ジョブコーチやメンター制度の導入

職場に適応しやすくするために、ジョブコーチ(職場適応支援者)やメンターを設置することが効果的です。

ジョブコーチは、業務の進め方や環境調整のサポートを行い、職場内の人間関係の調整も支援します。
また、メンター制度では、社内の先輩社員が業務の相談相手となることで、困ったときに気軽に相談できる体制が整います。

コミュニケーションの工夫と意思疎通の促進

障がい者が円滑に業務を進めるためには、コミュニケーションの取り方を工夫することが求められます。
例えば、聴覚障がい者向けには、メールやチャットツールを活用したコミュニケーションを推奨し、発達障がいのある社員には、明確で具体的な指示をテキストで伝えるといった工夫が有効です。
また、定期的に面談の機会を設け、業務や職場環境についてのフィードバックを行うことで、安心して働ける環境を作ることができるでしょう。

合理的配慮の提供

企業には、障がい者の能力を最大限発揮できるように**「合理的配慮」**を提供する義務があります。例えば、

「視覚障がい者に対して、拡大読書機や音声読み上げソフトを提供する」
「精神障がい者に対して、休憩時間の柔軟な取得を認める」
「身体障がい者向けに、業務を遂行しやすいデスクや椅子を用意する」

など、障がいの特性に応じた環境整備を行うことで、働きやすさを向上させることができます。

キャリア形成の支援とスキルアップの機会提供

障がい者も、一般社員と同様にスキルアップやキャリアアップの機会を確保することが重要です。
例えば、

「社内研修や外部セミナーへの参加を奨励する」
「eラーニングの導入により、本人のペースで学べる環境を整備する」
「昇進・昇格の機会を公平に提供する」

といった取り組みを行うことで、障がい者のモチベーション向上や組織内での成長を促すことができます。

企業の意識改革と社内教育

障がい者雇用を成功させるためには、企業側の意識改革も欠かせません。
社員全体が障がいについて理解し、共に働く姿勢を持つことで、より良い職場環境が実現します。
社内研修やワークショップを実施し、

「障がいの特性を理解するための教育」
「適切な接し方やサポート方法の共有」
「共生社会に向けた意識改革」

を進めることで、職場全体の受け入れ態勢を強化できます。

障がい者雇用を進めるための具体的なステップ

障がい者雇用を成功させるには、計画的なアプローチが必要です。
適切な目標設定から、採用、受け入れ体制の整備、継続的なフォローまで、一連のステップをしっかりと実施することで、組織にとって有益な雇用につなげることができます。

雇用計画の立案と目標設定

障がい者雇用を進めるにあたり、まずは企業の事業内容や職場環境に適した雇用計画を立てることが重要です。
法定雇用率を満たすことを前提に、どのような職種で受け入れが可能かを検討し、具体的な雇用目標を設定します。

例えば、事務作業、データ入力、バックオフィス業務など、定型業務が多いポジションを設けると、スムーズに職場に馴染みやすくなります。
また、障がいの特性に応じた働き方(時短勤務、テレワークの導入など)も計画段階で検討すると、受け入れの選択肢が広がります。

採用プロセスの工夫

採用の際には、障がい者が自身の能力を適切に発揮できるような選考方法を取り入れることが重要です。
一般的な面接だけではなく、実務体験を通じた選考や、障がい者雇用を専門とする人材紹介会社や支援機関と連携した採用プロセスを取り入れると、より適切なマッチングが可能になります。

障がい者向けの合同企業説明会への参加や、試用期間を設けた実習を活用することで、本人と企業双方の理解を深めることができます。
また、採用基準は能力だけでなく、企業文化との適性や職場でのサポート体制との相性も考慮することが成功のポイントです。

職場内の受け入れ体制の整備

採用した障がい者が安心して働ける環境を整えることが、定着率向上につながります。
まず、業務内容を明確にし、マニュアル化することで、職場での混乱を防ぐことができます。

また、配慮が必要なポイント(通院スケジュールの考慮、業務量の調整、支援ツールの導入など)を事前に整理し、職場全体で共有することも重要です。
社内研修を実施し、障がい者と一緒に働く従業員の理解を深めることが、円滑なコミュニケーションの促進につながります。

職場にジョブコーチやメンター制度を導入することで、困ったときに相談しやすい環境を整えるのも有効な施策です。

継続的なフォローアップと支援

障がい者雇用は、採用した後のサポートが非常に重要です。
定期的な面談を実施し、業務上の課題や職場での悩みをヒアリングすることで、問題が発生した際に早期対応が可能になります。

また、本人の成長や適性に応じて業務内容を調整し、キャリアアップの機会を提供することで、長期的な雇用の維持につながります。
企業が活用できる助成金や支援制度も積極的に活用しながら、持続可能な雇用環境を構築することが求められます。

障がい者雇用は、一度きりの施策ではなく、企業全体の働き方改革やダイバーシティ推進にも寄与するため、継続的な改善と支援が欠かせません。

まとめ:障がい者雇用をチャンスにした経営戦略を考えよう

障がい者雇用は法的義務であると同時に、企業にとっての成長機会でもあります。
多様な人材の活用により、新たな視点が加わり、生産性や組織の柔軟性が向上します。

また、適切な環境整備や支援制度の活用によって、従業員全体の働きやすさが向上し、企業のブランド価値向上にもつながります。
単なる雇用義務ではなく、経営戦略の一環として捉え、企業の強みを生かした持続可能な取り組みを進めていきましょう。

 

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