大手上場企業などの人気企業に入りたいと考えたとき、「新卒で入社する」のと「社会人経験を積んで転職で入社する」のでは、どちらが難しいのでしょうか?
新卒採用は一度きりのチャンスで競争倍率も高く難関だと言われます。一方、中途採用なら実務経験を活かして入りやすいという声も。
本記事では、20〜30代で初めての転職を検討している方に向けて、新卒採用と中途採用の違いや企業側が中途人材に求めるもの、そして「中途の方が楽」と言われる理由の真相を解説。
現在の転職市場の動向や需要の高いスキル、さらに大企業に中途入社するための戦略と転職初心者が陥りやすい誤解への対処法についても見ていきますので参考にしてください。
新卒採用と中途採用の違いを理解しよう
初めに、新卒採用と中途採用では採用の仕組みや基準が大きく異なることを押さえておきましょう。
企業の採用プロセスや評価ポイントがどう違うのか理解することで、自分に合った戦略を立てる第一歩になります。
新卒採用のプロセスと特徴
新卒採用は主に学校卒業見込みの学生を対象に行われ、毎年決まったスケジュールで一括して募集・選考が行われます。
多くの企業では大学4年生の就職活動解禁に合わせ、前年度の春頃(3〜4月)からエントリーが始まり、夏~秋にかけて筆記試験や面接が複数回実施され、内定は卒業前の秋から冬に出されるのが一般的です。
選考フローは長期にわたり、説明会・筆記テスト・グループディスカッション・一次面接・二次面接…と段階を踏んで最終面接に至ります。
大手企業ほど選考回数が多い傾向にあり、新卒採用では最低でも3回以上の面接を課す企業が多いと言われます。
内定後は入社前研修や懇親会が行われ、新卒入社者同士で同期としての一体感を醸成する文化も特徴です。
新卒採用では、応募者は皆「未経験の学生」で横一線のスタートであるため、採用基準はポテンシャル重視になります。
大学での専攻や成績よりも、人物面・将来性に焦点を当て、「入社後に成長して戦力になり得るか」「会社のカラーに染まれるか」といった点が評価されます。
極端に言えば、現時点でできることより“将来伸びしろがありそうか”が問われるのです。「なぜこの会社を志望するのか」「学生時代に力を入れたこと(いわゆるガクチカ)は何か」などの質問で熱意や人柄、潜在能力を測る選考が中心となります。
中途採用のプロセスと特徴
一方で中途採用(経験者採用)は、現在働いている社会人や過去に職務経験のある人が対象です。
募集のタイミングは不定期で、企業側の人手ニーズが生じたときに随時行われます。
例えば「欠員が出たので早急に補充したい」「新規プロジェクトに即戦力となる人材が必要だ」といった場合に求人が出されます。
そのため年間を通じて求人情報が掲載され、採用人数も1人〜数人と限られるケースが多いです。
募集ポジションごとに条件に合う人を採用したらその時点で募集終了となるため、選考スピードも新卒より速い傾向に。
中途採用の選考フローは企業や職種によって様々ですが、面接回数は新卒より少なめです。書類選考後、面接1~2回で内定というケースも珍しくなく、多くても3回程度で合否が決まることが一般的です。
募集部署の責任者や現場担当者が早い段階で面接官を務めることが多く、場合によってはいきなり最終面接(役員面接)から始まることもあります。
新卒のように大人数の集団面接や筆記試験を課す企業は少なく、必要なポジションにピンポイントで合うかが重視される実務的な選考が中心です。 中途採用では採用基準も即戦力重視にシフトします。
すでに社会人経験がある前提なので、「これまでにどんなスキル・知識を身につけ、どんな実績を上げてきたか」が重要視されます。
専門職の募集であれば、関連する職種で何年働いた経験があるか、具体的な成果(〇〇プロジェクトを成功させた等)を求められるでしょう。
企業によっては応募要件に細かく「○年以上の実務経験」「△△の資格保有」「□□業界の知識必須」といった条件が明示されることも。
応募者側はそれら応募資格を満たして初めてスタートラインに立てるイメージ。
逆に言えば、条件に合致する人にとっては競争相手が限られるため、選考に進みさえすればスムーズに内定まで進む傾向があります。
ただし、経験者採用にも例外はあります。
社会人経験が浅い20代前半(いわゆる「第二新卒」層)の採用では、企業が将来性も加味してポテンシャル採用を行うケースもあります。
入社後に自社色に染めて育成できる若手であれば、中途といえども人物面を重視して採用する企業もある点は押さえておきましょう。
主な違いのまとめ表
新卒採用と中途採用の違いをまとめると、以下の表のようになります。
項目 | 新卒採用 (新卒入社) | 中途採用 (転職入社) |
---|---|---|
応募対象 | 学卒見込みの学生(大学・大学院・専門卒等)。基本的に未経験者 | 社会人経験者(職歴のある人)。既卒3年以内の第二新卒を含む場合も |
採用時期・頻度 | 年1回の一括採用(主に4〜10月に選考、翌4月入社)。通年でスケジュール固定 | 通年不定期採用(欠員や増員ニーズに応じ随時募集)。充足次第募集終了 |
選考プロセス | 長期にわたり複数段階の選考(筆記・面接複数回など)。同期一括のため一律のフロー | 短期間で決定する傾向(書類選考+面接1〜3回程度)。ポジションごとに個別フロー |
採用基準 | ポテンシャル重視(経験不問)。将来性や人柄、企業文化とのマッチ度を評価 | スキル・経験重視。即戦力となる専門能力・実績が評価対象 |
競争倍率 | 非常に高い(応募者多数)。限られた枠に全国から志望者が集まる | ポジションごとで応募者限定的。要件合致者同士の競争だが母集団は小さい |
面接回数 | 3回以上が一般的。企業によっては5~7回に及ぶことも | 平均2回程度が多い。企業によっては1回で決まる場合も |
入社後の育成 | 手厚い研修とOJTで基礎から指導。同期入社の仲間と切磋琢磨しながら成長 | 即戦力として配属され即座に成果を期待。必要最低限の研修のみで現場投入 |
企業文化への適応 | 社会人経験がないため自社のカラーに染めやすい。社風になじみ将来のコア人材に育ちやすい | 前職までのやり方・価値観が確立されており自社色に染まりにくい。新風をもたらすメリットも |
中途採用の方が難易度が下がると言われる理由
ネット上でも「新卒より転職の方が楽だった」「中途の方が入りやすい」という声を目にすることがあります。
なぜそのように言われるのか、考えられる理由をいくつか整理してみましょう。
ただし「易しい」「難しい」の感じ方は人によって異なるため、ここでは一般的な傾向として論じます。
新卒採用はとにかく競争倍率が高い
まず、新卒採用は応募者数の桁違いな多さゆえに難易度が高いといえます。
人気企業であれば、全国から何千何万という学生が応募します。
実際、ある大手企業では新卒で数十万人規模の母集団から選考するのに対し、中途の募集では応募者が数人程度だったという指摘も。
新卒の場合、経験不問で門戸が広く開かれている分、母集団が非常に大きくなり、その中から選抜される競争は熾烈です。
さらに新卒採用では、評価基準が「ポテンシャル」という曖昧な要素に頼らざるを得ない難しさもあります。
企業は学生の将来性を見極めようとしますが、明確な物差しがないため最終的には面接官の印象や運にも左右されがち。
「その時たまたま調子が出せなかった」「面接官との相性が合わなかった」等の理由で不合格になるケースもあります。
つまり新卒採用は運やタイミングにも左右されやすく、難関試験のような側面があるのです。
こうした要素から「新卒で大企業に入るのは狭き門」という印象が強く、難易度が高く感じられます。
中途採用は条件がマッチすれば競争相手が少ない
一方、中途採用では募集ポジションの要件に合致する人だけが応募するため、競争相手がそもそも限られます。
例えば「◯◯の開発経験5年以上」「△△の資格保有者」という求人条件がある場合、それを満たす応募者しかエントリーできません。
裏を返せば、自分がその条件にマッチしていればライバルは多くても数人程度ということも珍しくありません。
新卒のように何万人の中から選ばれるのに比べれば、遥かに当選確率が高く感じられるでしょう。
また、中途採用では選考基準が明確で客観的。
前述の通り「必要なスキル・経験」がはっきり定義されているため、企業側もそれを満たすかどうかで比較的判断しやすくなります。
新卒のように漠然とした将来性を測るより、「この人は即戦力として期待できるか」を見る方が企業にとっても評価基準がブレにくいのです。
その結果、応募者から見ても「自分は〇〇の実績があるからきっと評価される」という手応えを持ちやすく、精神的な戦いやすさにつながります。
実際、「新卒のときは自分をどうアピールしていいか分からなかったが、転職では経験を語れば良いので楽だった」という声も。
仕事上の実績というアピール材料が明確な分、自己PRの組み立てもしやすいのです。
もっとも、裏を返せば「応募資格を満たすまでが大変」という見方もできます。
必要な経歴やスキルを積む努力は不可欠であり、未経験職種にいきなり転職するのは難易度が高いです。
しかしここでは、いったん応募条件をクリアして選考に乗ってしまえば、新卒ほどの大人数との競争ではないという点で中途の方が合格ハードルは低いと感じられやすい理由になっています。
選考プロセスの負担が新卒より軽い
難易度を語る際に見落としがちですが、選考プロセスの大変さも新卒と中途で差があります。
新卒就活はエントリーシートの作成から始まり、SPIなど筆記試験対策、複数回の面接、時にはグループディスカッションやインターン参加など、長期間にわたって多くのステップを踏む必要があります。
大学の学業と並行して就活スケジュールを調整する負担も大きく、精神的・体力的に消耗する学生も少なくありません。
これに対し中途採用では、応募書類(職務経歴書・履歴書)を提出し、あとは面接数回という簡潔なプロセスで完結する場合がほとんど。
書類選考から内定までも数週間〜1ヶ月程度と、新卒のように何ヶ月も待たされることは少ないでしょう。
「新卒では7回も面接があった会社に、中途では部署面接2回で入れた」という体験談もあるほどです。
このように選考そのものの手間・回数が少ないことも、「中途の方が楽だ」という印象を与える一因です。
現職の仕事を続けながら転職活動する場合でも、新卒時より調整しやすいと感じるでしょう。
ただし油断は禁物で、中途面接は一発勝負の比重が大きいとも言えます。
上で述べたように最終面接からスタートするケースもあり得るため、短期決戦に確実に準備して臨む必要があります。
プロセス自体は短くても、その分一回一回の面接結果が即合否に直結する緊張感はあります。
総合的な負担感としては「新卒より中途の方がマシ」という程度に捉えておくと良いでしょう。
チャンスが一年中あり再挑戦もしやすい
新卒採用は基本的に卒業予定年の一度きりで、次の年また新卒枠で応募することは困難です(既卒3年以内の特例を除けば、概ね新卒カードは一回限りです)。
そのため新卒で志望企業に入れなかった場合、「もうチャンスがないのでは?」と感じてしまう人もいます。
しかし中途採用なら時期を問わずチャンスが巡ってくる点で精神的なハードルが下がります。
例えば新卒でご縁がなかった企業でも、数年後に経験を積んでから中途枠で再挑戦することが可能です。
実際に「新卒時に落ちた有名企業に、転職で入社できた」という例は珍しくありません。
新卒では景気や採用人数の増減によって難易度が上下しますが、一度景気が好転して採用枠が拡大すれば、過去に落ちた人でも受かる可能性が十分にあります。
事実、2010年前後の就職氷河期に新卒採用が厳しかったコンサル業界で、数年後に採用枠拡大に合わせて再挑戦し合格したケースも多数報告されています。
さらに中途採用では「一度落ちても、経験を積んで再応募すれば受かることがある」点も見逃せません。
新卒の場合、同じ会社を再受験することは通常ありませんが、中途では不採用だった人が1〜2年後に再応募して採用されるケースがあります。
採用時に年齢や性別で制限を設けられない建前上、企業は求人票に書けない条件(たとえば「今回は◯歳前後の女性希望」等)を抱えていることもあります。
そのため「今回はたまたま要件に合わなかっただけ」で落ちた人が、状況が変わった次の募集で合格することもあり得るのです。
このように挑戦の機会が一度きりで終わらない点で、中途採用は心理的にハードルが低く感じられるでしょう。
企業側も即戦力採用に積極的になっている
近年の雇用市場の動向も、「中途の方が入りやすい」と言われる背景にあります。
少子化や景気変動により人手不足が深刻化しており、多くの企業が新卒だけでなく中途でも人材確保を進めています。
帝国データバンクの調査(2023年10月)によれば、回答企業の52.1%が正社員の人材不足を感じているといいます。
特に「旅館・ホテル」「情報サービス(IT)」業界では7割超の企業が人材不足を訴えており、採用ニーズが非常に高い状況です。
このグラフは日本における年間の転職者数の推移を示したものです。
ご覧のように、2019年に約353万人というピークに達した後、2020年はコロナ禍で一時的に転職者が減少しましたが、その後2021年を底に再び増加傾向にあります。
背景には人手不足を受けた企業側の賃上げや待遇改善の動きがあり、より良い条件を求めて転職する人が増えていることがあります。
つまり市場全体で見ても、中途採用の活発化が進んでいるのです。
特に大企業において中途採用は今や当たり前の採用手法になりつつあります。
リクルートワークス研究所の調査では、従業員1000人以上の企業の91.2%、5000人以上では95.9%もの企業が中途採用を実施しています。
以前は「大企業は新卒一括採用が中心」というイメージが強かったかもしれませんが、現在ではほとんどの大手が通年で経験者採用を行っています。
日経新聞の調べによれば、2024年度の企業の採用計画に占める中途採用比率は過去最高の43.0%に達し、新卒採用中心からの転換点を迎えているとも報じられています。
このように企業側が即戦力の中途採用に力を入れているため、応募者にとっても大手に入るハードルが以前より下がっていると言えるでしょう。
さらに企業の人材ニーズを見ると、専門スキルを持つ人材の争奪戦が激化しています。
例えばITエンジニアやデータサイエンティストなど高度なデジタル人材は慢性的に不足しており、パーソルキャリアの調査によればIT・通信業界の転職求人倍率(求人数÷求職者数)は7.59倍にも達します。
コンサルティング業界で9.68倍、人材サービスで8.88倍といった数字も見られ、**求職者市場(売り手市場)の様相です。
この状況では、該当スキルを持つ人にとって非常に有利な環境であり、「大企業にぜひ来てほしい」というオファーも珍しくありません。
実際、即戦力人材の獲得を目的に給与水準を引き上げる企業も増えており、転職者の約6割が年収アップを実現しているというデータも。
こうした追い風もあって、「今の時代、新卒でダメでも転職で大手に入れる可能性は十分ある」という声が出てくるのです。
転職市場の現状と需要の高いスキル・経験
ここでは、2025年現在の転職市場の動向と企業が求めるスキルについて見てみましょう。市場を知ることは、自分のキャリアをどうアピールすべきか考える上で重要です。
深刻な人手不足と売り手市場
現代の日本の雇用市場は空前の人手不足と言われています。
先述したように、半数以上の企業が「慢性的に正社員が足りない」と感じており、特に専門人材の不足が顕著です。
背景には少子高齢化による労働人口減少や、各業界での業務拡大に対して人材育成が追いついていない事情があります。
有効求人倍率(求人数を求職者数で割った指標)は、直近では全体平均で1.3〜1.5倍程度と求人数の方が多い状態が続いています。
新卒の大卒求人倍率も2024年卒で1.71倍と回復傾向にあり、企業の採用意欲は高まっています。
これはつまり、求職者一人あたり複数の求人がある売り手市場であることを意味します。特に中途では、同じく経験者を募集する企業同士が人材獲得競争を繰り広げており、「早く内定を出さないと他社に取られてしまう」という状況すらあるのです。
業界別に見ると、IT・通信、Web業界は以前から売り手市場でしたが、コロナ禍以降は旅館・ホテル業や飲食業などでも需要が急増しています。
観光需要の復活によりサービス業で人材不足が深刻になったためです。
また製造業でも海外需要の高まりで技術者不足が叫ばれています。
一方で景気に左右されやすい業界(例えば一部の小売や飲食チェーン等)では一時的に採用を絞る動きもあり、業種により温度差はあります。
しかし総じて、「経験者なら歓迎」という企業が多いことは確かです。
こうした人手不足の環境は、転職初心者にとって追い風です。
多少スキルに自信がなくても、「若手で伸びしろがあるなら」と採用してもらえる可能性が昔より高まっています。
また求人が多いので、自分に合う会社やポジションを選びやすいというメリットもあります。
もっとも、これは誰でも無条件に採用されるという意味ではありません。
次に述べるように、市場で特に求められるスキルを押さえておくことが重要です。
大企業が求めるスキルと経験トップ例
デジタルスキルは現在の求人市場で最も熱いキーワードの一つです。
DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する企業が増え、AIやデータ分析のできる人材の需要が非常に旺盛です。
例えばITエンジニア職では、クラウドやAI開発の知識を持つ人が引っ張りだこになっています。
2024年度の調査でも、IT・通信業界の平均年収が前年度比+17万円と大幅に上昇しており、生成AIやクラウドに精通したエンジニアのニーズ高騰が一因と分析されています。
セキュリティエンジニアやデータサイエンティストも希少人材として高待遇で迎えられる傾向があります。
また、技術職以外でも専門性の高い経験が評価されます。
製造業の組み込みソフトウェア開発経験者は、自動車の電動化やロボット開発の加速に伴い需要が伸びており、平均年収が大きく伸びています。
クリエイティブ職(デザイナーや映像制作など)や企画・管理部門でも、即戦力となる実績豊富な人は引く手あまた。
逆に未経験では入り込みにくい職種ほど、経験者には高いプレミアがつくわけです。
ビジネススキル面では、プロジェクトマネジメント能力や高度なコミュニケーション能力も依然として重宝されています。
特に管理職クラスの中途採用では、部下をまとめプロジェクトを推進できるリーダーシップや、社内外の調整を円滑に行う調整力が強く求められます。
またグローバル展開している企業では英語力があると有利。
海外取引や海外拠点とのやりとりが発生するポジションでは、TOEIC高得点や海外勤務経験などが評価されるでしょう。
加えて近年注目されるのが持続可能性(サステナビリティ)に関する知識・経験です。
ESG対応やカーボンニュートラルへの取り組みが求められる中、環境問題に詳しい人材やCSRの実務経験者に白羽の矢が立つこともあります。
もっとも、これらはごく一部の専門職であり、一般的な転職市場で突出して重要というほどではありません。
総じて、大企業ほど「社内にないスキルを持った即戦力」を求める傾向が強いです。
そのため、今の自分の経験を棚卸しして強みとなるスキルを再確認しましょう。
もし「これといった武器がない」と感じる場合は、ITスキルや語学など汎用性が高く需要のあるスキルを身につけることをおすすめします。
未経験職種に挑戦するにしても、関連する知識を独学や資格取得で補っておけば、採用側の評価も変わってきます。
転職で年収アップも可能だが現実的な目線を
人材不足を背景に、大手企業を中心に転職者の処遇改善も進んでいます。
前述の調査では、転職で年収が増加した人の割合は約59.3%と過去最高を記録しました。
特にベテラン人材を迎え入れるために年収レンジを引き上げる例が目立ち、転職は年収アップのチャンスと考える人も増えています。
ただし注意したいのは、年収アップはあくまで「即戦力」として評価された場合に得られる結果だということ。
企業側も高い給与を提示するからには、それに見合う貢献を期待します。
20代の若手が未経験分野に転職するケースなどでは、いきなり大幅年収アップとはいかないこともあります。
むしろ将来のキャリア構築やスキル習得を優先して、短期的な年収より長期的な成長を重視する選択も重要です。
現在の転職市場は「売り手市場」でありチャンスが多い反面、企業は具体的なスキル・経験を重視していると言えます。
自分の市場価値を高めるスキルを意識しつつ、実績をしっかりアピールできれば、大企業への門も開かれるでしょう。
では、実際に大企業へ中途入社を目指すにはどのような戦略を取ればよいでしょうか。
大企業に中途入社するための戦略
憧れの大企業への転職を成功させるには、場当たり的に応募するのではなく戦略的なアプローチが不可欠です。新卒採用と違い、中途採用ではあなたの経歴そのものが選考材料となります。
職務経歴書でアピールすべきポイントを明確にする
新卒のエントリーシートと異なり、転職の書類選考では職務経歴書が最重要です。
職務経歴書は単なる経歴の羅列ではなく、「自分が企業に何を提供できる人材か」を示すプレゼン資料だと考えてください。
大企業の採用担当者は多数の応募者の書類に目を通しますから、読みやすく効果的にアピールする工夫が必要です。
経歴の要約を冒頭に
最初に、自分の経験分野・年数・強みを端的にまとめた「PR要約」を載せましょう。
忙しい採用担当者は最初の数行で読むかどうか判断します。
「〇〇業界で△年の経験を持つ△△エンジニア。プロジェクトリーダーとしてチームを牽引し◎◎の実績を達成」など、一目で強みが伝わる書き出しが有効です。
実績は数値で示す
可能な限り成果を数字で表現しましょう(例:「売上を前年から120%に伸ばした」「コストを▲▲万円削減した」など)。
定量的な実績は説得力が増し、即戦力アピールに直結します。
大企業ほど数字による実績評価を重視する傾向があります。
応募先に関連する経験を強調
職務経歴は時系列で書くのが基本ですが、応募先企業・ポジションにマッチする経験は箇条書きや別枠で強調すると効果的です。
IT企業への応募なら「保有スキル:Java/Python開発5年、AWS設計3年」等とスキルセットを一覧化する、マネジメント職なら「マネジメント経験:チームリーダーとして5名の育成・評価を担当」等を明示するなどです。
転職理由・志望動機も論理的に
書類の段階で志望動機を求められることもあります。
新卒時のような抽象的志望動機ではなく、「御社では□□のスキルを活かし△△分野の事業成長に貢献したい」というように自分の経験と応募先のニーズを結び付ける形で書きます。転職理由についてもネガティブな退職理由より「◯◯に挑戦したい」という前向きな動機を述べる方が好印象です。
レイアウト・表現に配慮
読みやすさも大切。
箇条書きや表を用いて要点を整理し、一目で内容が頭に入るようにしましょう。
専門用語の説明や、自社内でしか通じない略語は避け、誰が読んでも伝わる表現にします。誤字脱字や年月の整合性ミスなどがあると注意力を疑われますので、提出前に入念にチェックしましょう。
中途面接の対策:新卒面接との違いを知る
書類が通過したら次は面接です。
中途採用の面接は新卒時とは質問内容も評価ポイントも異なります。
企業側が知りたいのは、「この人を採用したら具体的にどんなメリットがあるか」という点です。
そのため、以下のような切り口の質問が多くなります。
「これまでの経験を当社でどう活かせますか?」
中途面接の定番質問です。
ここで重要なのは、応募先企業の課題や業務内容を踏まえて、自分の強みを結び付けて語ることです。
ただ過去の成功体験を話すだけでなく、「御社の〇〇事業において、私の△△の経験を活かし□□のような貢献ができると考えています」と具体的に提案できると高評価に繋がります。
「転職理由は何ですか?」
これも高確率で聞かれます。
転職理由を語る際は、前職の不満より前向きな展望を中心に話しましょう。
「前の会社の待遇が悪くて…」ではなく、「より〇〇な環境で△△に挑戦したいと考えた」などポジティブな動機にフォーカスします。
前職の批判は控え、どう成長したいか・貢献したいかを軸に据えるのがポイントです。
「入社後のキャリアビジョンを教えてください」
大企業ほど将来的な展望も確認されます。ここでは応募先企業で長期的にどのように活躍したいかを語ります。
「まずは〇〇の分野で専門性を高め、将来的には御社の海外展開にも関わりたい」等、具体性と熱意を示しましょう。
新卒面接のように漠然と「御社で成長したい」では響きにくいので注意です。
「今までに直面した困難とそれをどう乗り越えたか?」
あなたの人間性や課題解決力を探る質問。
仕事上の具体的エピソードを用い、問題発生→行動→結果を簡潔に説明します。
失敗談でも構いませんが、その場合は必ず「そこから何を学び次にどう活かしたか」を添えてください。
大企業はチームで動くため、協調性や粘り強さも評価ポイントになります。
「何か質問はありますか?」
面接の終盤によく聞かれる逆質問です。ここで「特にありません」は避け、企業研究に基づいた質問を用意しましょう。
「御社の◯◯事業では今後△△のような展開をお考えでしょうか?」「入社後に身につけるべきスキルで何か推奨事項はありますか?」など前向きな質問は好印象です。
質問を通じて熱意とリサーチ力をアピールするチャンスと捉えましょう。
その他、中途採用の面接時の質問については以下の記事も参考にしてください。
「キャリアアップのための面接対策:よくある質問とその答え方」
「転職面接で逆質問は何個あればいい?面接で印象が良くなる逆質問例も紹介」
情報収集と求人ルートを駆使する
大企業の中途採用を成功させるには、どれだけ有益な情報を集められるかがカギになります。
新卒と違い、求人情報は分散していますし、企業によっては非公開求人や人材紹介会社経由の募集も多いです。
以下のようなルートを活用して情報戦を制しましょう。
転職エージェントを利用する
大手志向であれば、まず転職エージェントに登録して損はありません。特にマイナビエージェントやリクルートエージェントなどは20〜30代向けの優良求人を多数扱っており、書類添削や面接対策もサポートしてもらえます。
非公開求人(人気企業が応募殺到を避けるため非公開にしている求人)もエージェント経由なら紹介してもらえる可能性があります。
自分では見つけられないチャンスに出会えるので、ぜひ活用しましょう。
求人サイト・企業サイトをチェック
リクナビNEXTやdodaといった大手求人サイトにも日々新着求人が掲載されます。
希望条件でフィルタして定期的にチェックしましょう。
また、興味企業がある場合は直接その企業の採用ページを見るのも大切。
会社によっては自社サイトでしか求人を出さない場合もあります(特に人気大手は自社HPの採用フォーム経由応募を基本とすることも)。
定期的にターゲット企業の採用情報を確認しましょう。
人脈・OB訪問を活用
大学の先輩や知人にその大企業で働いている人がいれば、話を聞いてみるのも有益です。内部の雰囲気や求められる人物像、生の情報が得られるでしょう。
また最近はLinkedInなどプロフェッショナル向けSNSで企業人事や社員とつながるケースも。
直接「中途採用の募集予定はありますか?」と聞くのは難しいかもしれませんが、業界の知り合いネットワークから思わぬ紹介話が舞い込むこともあります。
転職活動中であることをオープンにできる間柄には、希望を伝えておくと良いでしょう。
ハローワークや合同企業説明会
意外かもしれませんが、地方案件などではハローワークにしか求人を載せない企業もあります。
ただ大企業の場合はあまり多くありません。
一方で中途向けの合同企業説明会(転職フェア)に大手企業が出展していることはあります。
そこで社員や人事と直接話せるため、積極的に参加して情報収集&顔を売るのも手です。
SNSやニュースで企業動向を把握
応募先企業のプレスリリースやニュースもチェックしましょう。
新規事業や海外進出などの情報は、人材ニーズを推測するヒントになります。
「◯◯事業拡大で△△に新拠点」と報じられていれば、その分野で採用が増えるかもしれません。
また企業公式の採用Xや採用ブログがあれば目を通し、企業文化や最近の採用トレンドを掴んでおきましょう。
スキルアップや資格取得で市場価値を高める
大企業への転職を目指す中で、「今の自分ではアピール材料が足りないかも…」と感じる場合もあるでしょう。
その場合は、転職前の準備期間にスキルアップや資格取得に取り組むのも有効です。
特に若手の場合、まだ経験年数が浅くても資格やスキル証明があるだけで評価がぐっと高まることがあります。
ITエンジニア志望なら、基本情報技術者試験やAWS認定資格などを取得しておくと「勉強熱心で基礎知識あり」と評価されやすくなります。
語学力を示すTOEICスコアも、点数が高ければ書類選考で目に留まりやすいポイント。
簿記資格や中小企業診断士など、志望職種に関連する資格も武器になります。
また資格に限らず、業務以外のプロジェクトや副業の経験もスキルアピールになります。エンジニアの方なら、GitHubに個人制作アプリを公開しておく、デザイナーならポートフォリオサイトを作る、マーケティング職ならブログで発信力を示す、といった具合です。
大企業の面接官は「自主的に学び行動する人材か」を見ていますので、自発的な取り組みはプラス評価につながります。
なお、闇雲に資格を取れば良いわけではなく、志望分野に直結するものに絞ることが大切です。
たくさん資格を取っても実務で活かせなければ意味がありませんし、履歴書が資格だらけなのも焦点がぼけます。
自分の志望や適性に照らし、「この企業のこの職種なら何があると有利か?」を逆算して準備しましょう。
スキルアップは転職活動だけでなく今後のキャリアにも資産となります。
ただし在職中にあまりにも時間を割きすぎて本業がおろそかになっては本末転倒。
業務と両立できる範囲で計画的に進め、次のステップへの投資と考えて取り組んでみてください。
転職初心者が陥りやすい誤解とその対処法
初めての転職活動では、新卒就活とは勝手が違うために誤った思い込みをしてしまうことがあります。
ここでは転職初心者が陥りやすい代表的な誤解を挙げ、それぞれ正しい理解と対処法を説明します。
誤解1:「大企業の中途採用なんてほとんど無いのでは?」
そんなことはありません。
現在では大手企業のほとんどが中途採用を活発に行っています。
実際、従業員1000人以上の企業の9割超で中途採用を実施しており、5000人以上の超大企業では95.9%が中途採用を行っています。
かつては「大企業=新卒一括採用がメイン」という時代もありましたが、今や中途採用は企業規模に関わらず一般的です。
特に人材流動性が高まる昨今、大企業ほど離職者補充や新規事業要員確保のために中途を積極活用しています。
大企業への転職チャンスは十分あると認識しましょう。
大企業の求人情報を見つけるにはエージェント経由や企業HPなど様々なルートがありますが、「どうせ大手は中途なんて取らない」と最初から敬遠しないことが大事。
興味のある企業があれば定期的に採用情報をチェックし、チャンスを逃さないようにしましょう。
また前述のように非公開求人も多いので、「水面下で募集している」ことも念頭に入れ、人脈やエージェントを通じたリサーチを怠らないでください。
誤解2:「新卒で入れなかった会社にはもう入れない」
そんなことはありません。
新卒でご縁が無かった会社でも、経験を積んで再チャレンジすれば入社できる可能性があります。
新卒時と中途時では企業側が見るポイントも応募者の成長度合いも違います。
新卒で不合格だった理由が、自分の未熟さにあったなら、数年の実務経験でその弱点を克服できているかもしれません。
また単に新卒当時は採用枠が狭かっただけという場合もあります。
タイミング次第で状況は変わるのです。
一度の失敗で可能性を閉ざさないことです。
「あの会社は新卒で落ちたから無理だ…」と決めつけず、中長期的な視点でキャリアを積んで再挑戦するという発想を持ちましょう。
具体的には、志望企業に求められそうな経験やスキルを他社で積んでみることです。
たとえば「将来的にトヨタに入りたい」なら、自動車関連の仕事で実績を作る、「〇〇商社に入りたい」ならまず関連業界で経験を積む、といったステップを踏むのも有効です。
一度でダメでも、諦めずに遠回りして目標に近づく戦略を立てれば道は開けます。
また、新卒で不合格だった理由を自己分析し、当時より成長できた点を客観的に示せるよう準備しておくことも大切です。
誤解3:「中途採用の方が楽だから最初の会社は適当でもいい」
これは非常に危険な誤解。
確かにここまで述べてきたように、中途採用は新卒採用より入りやすい面もあります。
しかしそれはあくまで自分がきちんと経験を積んで成長した場合。
最初の会社で実力やスキルを磨かずに漫然と過ごしてしまうと、中途で評価されるポイントが何もなくなってしまいます。
「どうせすぐ転職するから」と適当に仕事をしていると、いざ転職しようとしてもアピール材料がなく、結局苦労するのは自分。
特に20代のうちは将来の選択肢が広い反面、「若い=未熟」と見なされがちなので、ポテンシャル以上の価値を示すには明確な成果が必要になります。
もし最初の会社が合わずに転職したいとしても、そこで何らかのスキルや実績を残していれば次へのステップに繋がりますが、何も得られなかった場合は次も苦戦するでしょう。
企業側も「前職で頑張っていない人」が突然転職して活躍できるとは考えにくいものです。
最初の会社であっても「キャリアの基盤を作る場」と捉え、手を抜かず取り組みましょう。たとえ将来的に転職するつもりでも、そこで得た経験は次の武器になります。
転職を前提にするにしても、「この会社では〇〇のスキルを身につける」という目標を持って働くことです。
営業職なら営業力や顧客対応力、エンジニアなら開発スキルやプロジェクト経験など、何か一つは胸を張れる強みを作る意識で過ごしましょう。
もし現在在職中で転職を考えている人も、「どうせ辞めるから」と気を抜かず、最後まで業務に向き合うことで良い成果を残せれば、それが転職活動時の大きな自信になります。
誤解4:「新卒の感覚で転職活動すればうまくいく」
新卒就活と中途転職活動は似て非なるものです。
同じように自己PRや面接があるとはいえ、企業が見ているポイントも求められる準備も大きく異なります。
新卒時は学生らしさや将来性をアピールすることで評価されましたが、中途では前述の通り実績・スキルが重視されます。
新卒の感覚のまま「熱意さえ見せればなんとかなる」と思っていると痛い目を見るでしょう。
例えば職務経歴書の書き方一つ取っても、新卒の履歴書・ESとは全く違います。
形式やマナーも異なりますし、自己PRも仕事ベースで語らねばなりません。
面接でも「学生時代頑張ったこと」ではなく「社会人として何を成し遂げたか」を問われます。
新卒時の成功体験がそのまま通用しないことを認識しておかないと、「思っていたのと違う…」と戸惑うことになります。
頭を切り替えて中途モードの準備をしましょう。
もし転職活動の進め方が分からなければ、信頼できる転職エージェントや転職経験のある先輩に相談するのも良い方法です。
自己流でやってうまくいかない場合、プロの視点でアドバイスをもらえば改善点が見つかるかもしれません。
特に応募書類のブラッシュアップや面接練習は、第三者からのフィードバックが有効です。
新卒のとき以上に周到な準備がカギと心得て、早め早めに対策をとりましょう。
また、新卒時の成功・失敗体験から学ぶことも大切です。
当時うまくいかなかった人はその反省を活かし、例えば「自己アピールが弱かったから今度は数字で補強しよう」など改善策を講じましょう。
逆に新卒でうまくいった人も油断せず、「あのときは勢いで通ったけど今回はそうはいかない」と気を引き締めてください。
経験者としての自覚を持ち、謙虚に学び直す姿勢が、転職活動を成功させる秘訣です。
まとめ:論理的な準備でチャンスをつかもう
新卒入社と中途入社の難易度の違い、そして中途採用の方が易しく感じられる理由について、様々な角度から解説してきました。
総括すると、新卒採用は一発勝負の厳しさがある一方、中途採用は経験に基づき評価される分チャンスが広がっていると言えます。
ただし「易しい」と言っても決して油断できるものではなく、自分を成長させる努力と周到な準備があって初めて大企業への道が開ける点を強調しておきます。
20代・30代の皆さんは、これからキャリアの選択肢がどんどん増えていく時期。
新卒で思うような結果が得られなくても、中途という形でリベンジすることは十分可能ですし、実際に多くの先輩方がそれを実現しています。
重要なのは「最初の就職がゴールではなく、キャリアは長期戦」という視点を持つこと。
新卒・中途それぞれの特徴を理解し、自分の強みと市場のニーズを冷静に分析すれば、必ずや自分に合った活躍の場が見つかるでしょう。
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