契約社員・派遣社員が転職活動をする最適なタイミングは、契約更新の時期やプロジェクトの終了間近など、次のステップへ進む準備が整っている時です。
この記事では、契約社員・派遣社員が転職を検討する際に考慮すべき要素や、損をしないための戦略について解説します。
契約社員や派遣社員の場合、有期契約といって、雇用の期間が明確に決められているため、自己都合での退職が認められにくいケースもあります。
正社員が転職活動を行うときとは違った注意点も出てきますので、派遣社員・契約社員の方が転職活動を考えているという場合には参考にしてください。
契約社員と派遣社員の違い
まず、契約社員と派遣社員の違いから確認していきましょう。
いずれも正社員ではありませんが、どのような点が違うのでしょうか。
契約社員とは?
契約社員とは、企業と直接雇用契約を結び、一定期間の働き手として採用される人のことを指します。
正社員とは異なり、契約期間が明確に設定されており、期間満了後に更新の可能性があります。
この雇用形態は、企業側が特定のプロジェクトや業務に対するニーズに応じて柔軟に人材を確保できるメリットがある一方で、契約社員は正社員に比べて福利厚生や雇用の安定性が異なる場合が多いです。
ただし、専門性を活かした仕事に就くチャンスも多く、キャリアアップを目指す方にとって魅力的な選択肢となることもあるでしょう。
派遣社員とは?
派遣社員とは、派遣会社によって他の企業に労働力として提供される働き手のことを指します。
この雇用形態では、派遣社員は派遣会社と雇用契約を結び、派遣会社から様々なクライアント企業のプロジェクトや業務に派遣されます。
派遣社員の特徴は、勤務地や業務内容がプロジェクトごとに変わる可能性がある点です。
多岐にわたる業界や職種の経験を積むことができ、広い視野とスキルセットの拡充が期待できますが、派遣先企業と直接雇用契約を結ばないため、雇用の安定性や福利厚生の面で差異が生じる場合があります。
柔軟な働き方を求める人、短期間で様々な職場体験を積みたい人に適した選択肢となるでしょう。
契約社員・派遣社員は契約途中で退職不可
契約社員・派遣社員には契約期間が決められているため、契約途中で退職することは原則できません。
しかし、例外的に契約途中でも退職をすることができるケースもあります。
契約社員・派遣社員は2週間前ルールが使えない
契約社員や派遣社員は、特定の期間を定めて働く雇用形態であるため、一般的に知られる「2週間前に退職の意向を伝える」というルールが適用されない場合が多いです。
これは、期間の定めがない正社員とは異なり、契約期間内の雇用が前提とされているためです。
その契約期間を途中で終了させようとする場合、契約不履行とみなされ、場合によっては損害賠償の請求対象となる可能性も。
ただし、損害賠償が発生するのは、実際に損害が生じ、その額が確定し、かつその損害が契約途中の退職によって発生したことが証明された場合に限られます。
契約書に違約金が設定されている場合でも、労働基準法上はそのような条項が無効とされることがあるため、慎重に契約内容を確認しましょう。
契約社員や派遣社員が契約途中で退職を考える際には、法的なリスクや契約内容をよく理解し、適切な手続きを踏むことが重要です。
契約社員・派遣社員が契約途中でも辞められる4つのケース
契約社員や派遣社員が退職を考える際には、契約期間の終了を待って自然に雇用関係を終了させるのが最もスムーズな方法です。
この場合、特別な手続きは必要なく、契約終了により自動的に雇用が終了します。
これが最も面倒なトラブルを引き起こさない方法でもあるでしょう。
しかし、契約終了出ない場合でも、以下のような理由であれば、途中でも退職が認められることがあります。
①私事ではあっても「やむを得ない理由」がある
特定の「やむを得ない理由」が存在する時に限り、契約期間内であっても退職することができます。
こうした理由には、
- 職場でのハラスメント
- 過度なサービス残業
- 重大な健康問題
- 家族のケアが急遽必要になった
などが含まれます。
これらの状況では、雇用契約の早期終了が正当化され、退職が許可されることが多いです。
しかし、
単に仕事内容に満足していない
より良い職場を求める
などの自己都合による退職は、通常、「やむを得ない理由」とは見なされません。
契約期間内の退職を検討している場合は、まずは状況を正確に評価し、可能であれば専門家や労働相談窓口へ相談しましょう。
②契約期間が1年以上かつその期間のうち1年が経過している
契約社員や派遣社員が契約期間中に退職を希望する際、契約期間が1年以上であり、その期間のうち1年が経過している場合は、特別な理由がなくとも退職が可能になるケースがあります。
これは、労働基準法第137条に基づくもので、長期契約の労働者に一定の柔軟性を提供するための規定です。
第百三十七条
期間の定めのある労働契約(一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除き、その期間が一年を超えるものに限る。)を締結した労働者(第十四条第一項各号に規定する労働者を除く。)は、労働基準法の一部を改正する法律(平成十五年法律第百四号)附則第三条に規定する措置が講じられるまでの間、民法第六百二十八条の規定にかかわらず、当該労働契約の期間の初日から一年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる。
(出典:昭和二十二年法律第四十九号 労働基準法)
例えば、2年の契約期間を結んでいる契約社員や派遣社員は、最初の1年を終えた時点で、新たな職を探すなどの自己のキャリアプランに基づいて、契約を終了させる選択をすることができます。
③労働条件に相違がある
労働基準法第15条に基づき、採用時に提示され、合意された労働条件と実際の労働環境や条件が明らかに異なる場合、労働者は労働契約を直ちに解除する権利を有します。
これは、雇用主と労働者間の信頼関係の基礎となる契約条件の透明性と誠実性を守るための法的保護措置です。
第十五条
使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
② 前項の規定によって明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。
(出典:昭和二十二年法律第四十九号 労働基準法)
例えば、給与、労働時間、仕事の内容や場所など、契約書に記載された条件と実際の状況に顕著な違いがある場合、これらは労働者にとって契約解除の正当な理由となる可能性が高いです。
契約途中での退職を検討する際には、このような法的根拠を理解し、適切な対応を取ることが重要です。
④企業と労働者で合意している
契約社員や派遣社員が契約期間中に退職を検討する際、「企業と労働者で合意している」場合は、特にやむを得ない理由がなくとも、双方の合意のもとで退職が可能です。
このケースでは、明確な退職の理由が自己都合であっても、企業側との協議を通じて双方が納得すれば、円満な退職が実現します。
例えば、労働者がキャリアの変更を望むなど、自身の将来について考えた結果、契約を継続することが難しいと判断した場合が該当するでしょう。
重要なのは、企業との開かれたコミュニケーションを保ち、合意に至るまでの過程を丁寧に行うこと。
これにより、契約期間内でも柔軟にキャリアの調整が可能になり、双方にとって最良の解決策を見出すことができます。
派遣社員・契約社員が転職活動をするタイミング
正社員ならば、通知期間を経て容易に退職できる自由がありますが、派遣社員・契約社員では、契約期間内の離職は原則として認められていないため、同じようにはいきません。
転職活動には通常2~3ヶ月かかり、多くの場合、新しい職場も1ヶ月程度なら待ってくれます。
しかし、契約終了まで半年以上ある場合は、新しい職場が待ってくれないこともあり、辞めるか、内定を諦めるかの選択を迫られることもあるでしょう。
契約終了日から逆算してそれぞれの時期にどのような転職活動を進めておけばいいのかを解説します。
退職予定月の半年前:自己分析期間
退職を予定している月の約半年前は、自身のキャリアと能力を深く理解するための自己分析を行う期間として最適です。
この段階では、自分自身がどのような職種や業界に適性を持っているのか、過去の実績や経験から何を学び、どのようなスキルや能力を身につけてきたのかを綿密に考察しておきましょう。
社会人生活だけでなく、学生時代の活動や海外での経験も含めて、自分のキャリアを全面的に振り返ることで、次のステップに向けた明確な方向性を見出すことができます。
自己分析は丁寧に行わなければ、転職先でミスマッチを起こすリスクが高まります。
急いで求人を探したくなる気持ちも分かりますが、まずは自己分析を焦らず時間をかけて行いましょう。
転職後のミスマッチを防ぐ方法については以下の記事も参考にしてください。
「転職後のミスマッチを防ぐには?ミスマッチ転職の原因と防ぎ方を解説」
退職予定月の4か月前:求人を探す期間
退職予定の4ヶ月前は、新しい職場を見つけるための活動を本格化させる時期。
この段階では、自分が将来どのようなキャリアを築きたいのか、どの業界や職種が自分に適しているのかについて、既に行った自己分析の結果を基に具体的な求人検索を始めます。自分の興味やスキル、キャリア目標を踏まえて、適合する職場環境やポジションを探し出すことが重要になります。
転職サイトやエージェントサービスの利用、業界の情報収集、職種に関するリサーチを通じて、自分のキャリアビジョンに合致する求人を見つけましょう。
退職予定月の3か月前:採用面接スタートさせる期間
退職予定の3か月前は、積極的に採用面接を開始するフェーズに入ります。
この時期には、求人への応募プロセスを本格化させ、履歴書や職務経歴書などの応募書類の準備を完了させていきます。
各応募企業に対して、自分がその企業に興味を持った理由、入社後に実現したいキャリアビジョン、そしてこれまでの経験やスキルをどのように仕事に活かしていきたいかを明確に伝えられるようにしておきましょう。
退職予定月の1か月前:契約更新をしない旨を伝える
退職予定の1ヶ月前は、現在の契約を更新しない意向を正式に通知するタイミングです。この時期には、転職先からの内定を受け取った場合、派遣会社や契約先の担当者に対して、契約更新を希望しない旨を伝えましょう。
契約社員から正社員に向けた転職方法
契約社員(派遣社員ではない)から正社員への転職方法としては、以下の2つが考えられます。
①正社員募集の求人への応募
②契約社員から正社員登用を目指す
①正社員募集の求人への応募
正社員募集の求人への応募が一般的でしょう。
転職サイト、転職エージェントへの登録やハローワークを活用することで転職活動をしていきます。
ハローワークは政府が運営する公的な就職支援サービスであり、地域に根差した求人情報の提供や、職業相談などのサポートを受けることができます。
特に地元の企業への転職を希望する場合に有効です。
現代の転職活動では転職エージェントを利用することも当たり前になっていますので、自分のスキル・希望の待遇などが明確になっている方は転職エージェントを積極的に活用してみるのもいいでしょう。
直接応募とエージェントの利用で迷っているという方は、以下の記事も参考にしてください。
「転職は直接応募の方が有利は本当?転職エージェントと直接応募のメリット」
採用面接で「正社員になりたい」を過度にアピールするのは注意
採用面接において、「正社員になりたい」という意欲を過度にアピールすることは、慎重に行う必要があります。
正社員として働くことへの強い希望を持つことは重要ですが、それを強調し過ぎることで、面接官に対して間違った印象を与えかねません。
特に、「どの企業でも良いから正社員になりたい」と捉えられてしまうリスクがあります。そのため、面接では自己のスキルや経験、そしてそれらをいかにして志望する企業で活かし、貢献できるかにフォーカスし、具体的な転職後のビジョンを提示することが肝心。
また、現在進行形で取り組んでいる学習やスキルアップの取り組みを共有することで、自己の成長意欲と志望企業への献身的な姿勢をバランスよくアピールしましょう。
②契約社員から正社員登用を目指す
多くの企業では、優秀な契約社員を長期的なビジョンのもとで正社員として登用する制度を設けています。
ただし、全ての企業がこのような制度を有効に活用しているわけではないため、実際に登用された実績があるかどうかを確認することが重要です。
正社員としての登用を目指すには、日頃からの業務遂行能力の高さやチーム内でのコミュニケーション能力、さらには企業文化への適応力を示すことが求められます。
登用試験や面接がある場合、事前の準備と対策も欠かせません。
今の職場で正社員登用の可能性があるのであれば、正社員登用の条件を確認し、一つずつクリアにしていく選択肢もいいかもしれません。
契約社員・派遣社員が転職活動をする前に知っておくべき7つのこと
契約社員・派遣社員が転職活動をする前に確認し、知っておきたいことを7つ取り上げました。
①契約期間中の退職が認められないケースがある
基本的に派遣社員・契約社員は契約期間中の退職が認められないのが普通。
退職を認めてもらえることが当たり前であると思ってはいけません。
期間中の退職が認められない場合には、契約期間までは在職し、契約が切れるタイミングで別の職場で仕事ができるようにスケジュールを立てましょう。
②就業規則について
退職を相談する前に、企業の就業規則を調べましょう。
就業規則は従業員が確認できるように整備されているはずです。
就業規則を確認し、
満了金の有無や条件
退職金の有無や条件(基本的に契約社員・派遣社員には支給されないことがほとんど)
退職を伝える場合には退職日の何日前までに申告が必要なのか
派遣社員・契約社員が契約期間中に退職できるのか、できる場合の条件
などをチェックしてください。
退職する場合、自分にとってどのタイミングでの退職が有利になるのかを考えてから転職活動を進めましょう。
③離職理由欄によって失業保険の給付タイミングが変わる
転職活動を始める前に、契約社員や派遣社員が知っておくべき重要なポイントの一つに、「離職理由欄によって失業保険の給付タイミングが変わる」ということがあげられます。雇用保険に加入していた場合、退職後の失業保険の受給条件や給付開始日は、離職理由によって異なります。
特に、契約社員や派遣社員は、離職理由の区分が正社員と比べて細かいため、退職後に離職票を受け取った際には、その理由欄を細かく確認することが重要です。
離職理由が事実と異なる記載であった場合には、速やかに人事担当者へ確認を取り、必要に応じてハローワークで相談しましょう。
④年金・社会保険について
転職活動を始める前に、契約社員や派遣社員が理解しておくべき重要なポイントの一つに年金制度の知識があります。
日本の年金制度は主に国民年金と厚生年金の二つに分かれており、各々が老後の生活をサポートするものです。
厚生年金に加入していると、保険料の半額を会社が負担してくれるため、将来の年金受給額がより有利になります。
しかし、契約社員や派遣社員の場合、雇用形態によっては国民年金のみの加入となることもあるため、自己の年金加入状況を確認し、必要に応じて将来への備えを考える必要があります。
退職後の健康保険の任意継続制度とは異なり、厚生年金にはそのような制度がないことにも注意しましょう。
⑤退職タイミングは退職者が少ないときにする
「退職者が少ない時期に退職する」ことは、企業への配慮とスムーズな移行を図るうえで有効な戦略と言えます。
企業が人手不足に陥ることなく業務を継続できるよう、退職予定者が少ない時期を見極めることは、お互いにとってのメリットが大きいです。
一斉に多くの契約社員や派遣社員が退職すると、業務の遂行に支障をきたし、プロジェクトの遅延や品質の低下を引き起こす可能性があります。
そのため、これまでの勤務に感謝し、次のステップへ進むにあたって、企業への迷惑を最小限に抑える退職タイミングの選択を心がけましょう。
⑥退職タイミングは繁忙期を避ける
繁忙期を避けて退職することは、円滑な転職のためには大切です。
多くの企業では、決算期や年度末の12月や3月は業務が特に忙しくなるため、この時期に退職を選択すると、現職での引き継ぎが難しくなるだけでなく、転職先でも新たな職務に必要な指導やサポートを受けにくくなる可能性があります。
転職先の社員も同様に忙しいため、新入社員への十分な指導が難しい状況に陥りがちだからです。
さらに、繁忙期は在籍している会社でも休暇を取得しにくいため、転職活動自体がスムーズに進まない可能性が高まります。
したがって、8月~10月のように業務が比較的落ち着いている時期に転職活動を行うことがいいでしょう。
転職のおすすめタイミングについては、業界・企業ごとに異なりますが、以下の記事も参考にしてください。
「転職のおすすめタイミングはいつ?転職の最適タイミングをケースごとに解説」
⑦契約満了時以外は退職届が必要
契約の満了時以外に退職をする場合、退職届が必要であることにも注意しましょう。
契約を満了し、契約の更新を行わずに退職する場合には退職届は不要ですが、それ以外のケースでは退職届を書かなくてはいけません。
退職理由によって離職理由欄に記載される内容が異なりますので、いつ・どのような理由で辞めたのかは証拠として残す必要があります。
契約の満期が近づいたタイミングで企業側から退職を勧められるケースもありますが、このような場合は、自己都合退職ではなく、会社都合による退職になります。
前述しましたが、失業保険の給付にも影響するのが離職理由です。
しっかりと確認するようにしましょう。
まとめ:契約社員・派遣社員の転職活動は契約満了日から逆算することが重要
契約社員・派遣社員の方が転職活動を行う場合、正社員と同じように考えるとつまずくケースがあります。
契約期間の縛りを忘れずに、契約満了日から逆算した転職活動でも問題なさそうか、確認をしておきましょう。
契約期間中であっても、転職を応援してくれる企業も増えてきていますが、すべての企業がそうとは限りません。
転職活動も大事ですが、今の職場へ「辞める」と伝えるときの伝え方やタイミングにも気を付けましょう。
「辞める」と伝えるときのポイントについては以下の記事も参考にしてください。
「転職先が決まったら?今の会社へ『辞める』と伝えるときの伝え方を解説」
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