あなたの周りに、社内の部署異動によって見事にキャリアアップを遂げた人はいないでしょうか。
なぜその人は社内異動で成功できたのか、不思議に思うこともあるかもしれません。
本記事では、「社内異動」と「転職」の違いやそれぞれのメリット・デメリットを整理し、社内異動でキャリアアップを実現する人々の共通点を解説。
さらに、もし社内で希望する異動が難しい場合には、前向きに転職を検討することの大切さについても触れ、皆さんが今後のキャリアを主体的かつポジティブに切り拓くためのヒントをお届けします。
社内異動と転職の違い
社内での異動か、それとも思い切って転職か──キャリア形成の岐路で迷う方も多いでしょう。
同じ会社に留まり新たな役割に挑戦する「社内異動」と、環境を変えて新天地へ踏み出す「転職」には、本質的な違いがあります。
それぞれにメリット・デメリットがあり、一概にどちらが良いとは言えません。
まずは両者の特徴と違いを理解し、キャリアアップの選択肢として何が異なるのかを見ていきましょう。
社内異動とは?
社内異動とは、現在勤めている同じ会社の中で部署や職種を変更し、新たな役割に就くことを指します。
例えば、営業部から企画部へ異動するように、会社に在籍したまま別の部署で新しい業務に挑戦する形です。
異動の実施には、会社側の人事異動として辞令によって行われる場合と、社員自身が公募制度などを利用して希望を出し実現する場合があります。
多くの企業では、社員のスキル活用や成長、適材適所の配置を目的に何らかの異動制度を設けています。
社内異動は雇用先を変えずにキャリアの幅を広げる方法と言えるでしょう。
なお、「部署異動」「職種転換」「転勤」など様々な形態がありますが、本記事では主に同一企業内での部署変更によるキャリアアップに焦点を当てて話を進めます。
転職とは?
転職とは、今勤めている会社を退職し、別の会社へ移ること。
現在の職場環境や雇用関係を一度リセットし、新たな企業で新しい仕事に就きます。例えば、異なる業界へ飛び込んで新分野に挑戦するケースや、より良い待遇やポジションを求めて同業他社に移るケースなど、その形態は様々です。転職活動では自ら求人を探して応募し、選考(書類や面接)を経て内定を得るプロセスを踏むため、基本的には自分の意思と行動でキャリアを動かす選択肢と言えます。
社内に留まる異動に比べ、職場環境も人間関係も一新されるため大胆なチャレンジとなりますが、その分新たな可能性との出会いや自己成長の機会も秘めています。
社内異動のメリット・デメリット
社内異動にはどんな利点や注意点があるでしょうか。主なメリットとデメリットを整理してみます。
社内異動のメリット①:安定した環境で新しい経験を積める
現職の雇用や給与体系を維持したまま別部署の業務に挑戦でき、待遇が変わらない分安心感があります。
社内制度やルールも共通のため、異動先の仕事に集中しやすいでしょう。
社内異動のメリット②:社内の人間関係や知識を活かせる
同じ会社内での移動のため既存の社風や業務プロセスを理解しており、顔の知れた同僚も多い状況です。
それまで築いた人脈を活用できるので、異動後もスムーズに業務を進められます。
また、自分のこれまでの評価や信頼が新しい部署でも引き継がれる可能性があります。
社内異動のメリット③:リスクが比較的低い
転職に比べ未知の環境へ飛び込むわけではないため失敗のリスクが小さく、万一新しい業務が合わなくても会社内で別の役割を探す余地があります。
身分や待遇が大きく変わらない分、心理的な負担も抑えられる傾向です。
社内異動のメリット④:企業文化やルールを熟知している
長く勤めた会社であればその文化やルールを既に理解しています。
ゼロから人間関係を築いたり業務フローを覚えたりする必要がないため、新しい部署への適応がスムーズに進みやすい点もメリットです。
社内異動のデメリット①:キャリアの視野が広がりにくい
同じ会社に留まるため業界全体の視点を得る機会が限られ、他社の新しいやり方に触れることは簡単ではありません。
また、一つの企業の枠内では給与や役職の大幅アップは期待しづらく、キャリアアップのスピードに限界がある場合もあります
社内異動のデメリット②:希望通りの異動が叶うとは限らない
異動先やタイミングの決定権は会社側にあり、必ずしも自分が望む部署に行けるとは限りません。
異動したくてもポストの空きや会社の方針次第では実現が先延ばしになることもありますし、社内の人間関係や政治的な事情で希望が通らないケースもあります。
社内異動のデメリット③:環境の変化が少なく成長が停滞する恐れ
社外への挑戦ほどの大きな変化や刺激がないため、変化を求める人には物足りなく感じる場合があります。
また、慣れた環境に留まることで現状維持に陥り、自分の成長が停滞してしまうリスクも指摘されています。
社内異動は安定している反面、“ぬるま湯”に浸かったままにならないよう注意が必要です。
転職のメリット・デメリット
次に、転職(社外へのキャリア移動)のメリットとデメリットを見てみましょう。
転職のメリット①:大幅なキャリアアップの可能性
転職によって他社で自分の経験やスキルが高く評価されれば、現職よりも高い役職や年収を獲得できるチャンスがあります。
特に深刻な人材不足に悩む企業ほど優秀な人材に好待遇を提示するため、短期間で昇進・昇給を実現しやすい傾向があります。
転職のメリット②:新しい挑戦とスキルアップ
未経験の業務や未知の業界に飛び込むことで、これまでにない知識やスキルを習得する機会が得られます。
環境が変わることで自分の可能性を広げ、大きく成長できるでしょう。
停滞感を打破し、キャリアの幅を広げるには転職は有効な手段となります。
転職のメリット③:職場環境を変えられる
今の職場での人間関係や社風に不満がある場合、転職によって自分に合った働きやすい環境を選ぶことができます。
合わない環境に無理に留まる必要がなくなり、ストレスの原因だった要素から解放されて心機一転働ける点は、社内異動にはない利点です。
転職のメリット④:自分の市場価値を確認できる
転職活動を通じて、自分のスキルや経験が外の市場でどのように評価されるかを知ることができます。
他社から求められる能力や提示される待遇を知ることで、自身の価値を客観的に把握でき、今後のキャリア戦略を練るうえでも参考になるでしょう。
転職のデメリット①:新しい環境への適応が必要
新しい環境への適応が必要: 転職先の企業文化や仕事の進め方に慣れるまで時間がかかる場合があります。
特に異業種や異なる職種へ転身する場合は、一から人間関係を構築し直し、新たな知識やスキルを学ぶ努力が必要です。
最初は思うように成果を出せず、もどかしさを感じるかもしれません。
転職のデメリット②:安定性の欠如・ミスマッチのリスク
新しい会社が自分に合うかどうかは、実際に働いてみるまで分かりません。
もし入社後に「想定と違った」「自分に合わない」と感じた場合、再び転職を検討せざるを得なくなるリスクがあります。
社内異動と異なり、合わなければすぐに元の会社へ戻るといった選択肢は基本的にないため、転職はある意味一発勝負の面があることは否めません。
転職のデメリット③:転職活動に手間とストレスがかかる
在職中に転職先を探す場合、求人情報の収集や応募書類の準備、面接への対応などに時間と労力を割く必要があります。
仕事を続けながらの活動は肉体的・精神的に負担となることもありますし、退職から入社までの間は収入が途絶える不安も伴います。
転職はメリットも大きい反面、そのプロセス自体に一定のハードルがある点は心得ておきましょう。
キャリアアップのため異動と転職、どちらを選ぶべき?
社内異動と転職の特徴を見てきましたが、キャリアアップを考える際、最終的にどちらを選ぶべきかは状況や本人の志向によって異なります。
【手っ取り早くキャリアアップしたい人】にとっては、空席が出るのを待たねばならない社内異動よりも、転職で新たなポジションに挑戦する方が近道になるケースが多いでしょう。
実際「より良い求人に出会える機会や昇進の早さは転職の方が上だ」との指摘もあります。一方で、【リスクを抑えて着実にステップアップしたい人】や【現職に愛着があり社内でキャリアを積みたい人】にとっては、社内異動の方が適している場合もあります。
例えば現在の会社に自分の目指すポジションや職種が存在し、会社もそれを支援してくれる風土があるなら、社内異動によるキャリア形成も有力な選択肢です。
「自分の目標をいつまでに実現したいか」「現職でそのチャンスが得られそうか」が判断のポイントになります。
社内に希望の機会が見込めるなら異動を目指して準備し、そうでないなら転職で外に活路を見出すといったように、状況に応じて柔軟に考えましょう。
どちらを選ぶにせよ、自分のキャリアの主導権を握り、後悔のない決断をすることが大切です。
社内異動でキャリアアップに成功する人の特徴
社内で希望する部署に異動し、ステップアップを遂げる社員には共通する特徴があります。単に運やタイミングだけではなく、普段から努力や工夫を重ねた結果として会社に必要と認められ、チャンスを掴んでいるのです。
社内異動でキャリアアップを成功させる人々に見られる代表的なポイントを解説します。
現部署で優れた成果を上げている
社内異動で抜擢される人の第一の条件は、現在所属する部署で高い成果を残していることです。会社の期待に応えて実績を出している社員は、異動の希望も通りやすくなります。
誰もが認める結果を出していれば「この人なら別部署でも戦力になるはずだ」と周囲から信頼され、希望する部署への社内公募があった際にも優先的に選ばれやすいでしょう。
逆に今の部署で目立った成果を出せていない段階で異動を求めても説得力に欠けてしまうため、まずは目の前の仕事で結果を出すことが先決となります。
異動の目的が明確で前向き
異動を望む理由が前向きで明確であることも重要です。単に「今の上司が嫌だから」「仕事がきついから」といったネガティブな動機では、受け入れ先も積極的には動いてくれません。
一方、「○○のスキルをさらに伸ばして別部署で貢献したい」「新規事業にチャレンジして会社に新たな価値をもたらしたい」等の前向きな理由であれば、上司や人事も応援しやすく周囲からの理解も得やすくなります。
実際に異動で成功する人は自身のキャリア目標がはっきりしており、その実現手段として社内異動を捉えている場合が多いです。
ポジティブな目標を持ち、それを社内に対してきちんと伝えている姿勢が、周囲の信頼と協力を得る大きな要因となります。
新しい部署で必要なスキルを磨いている
社内異動でキャリアアップする人は、希望先の部署で求められるスキルや知識を事前に身につけている場合が多いです。
異動先で必要となる専門知識の勉強を独学でしたり、関連資格の取得や社内研修への参加を通じて、自ら必要な準備を整えています。
自分から積極的に必要スキルを磨いておけば、「この人なら異動先でも即戦力として活躍してくれそうだ」と評価されやすくなり、異動の実現に一歩近づくでしょう。
裏を返せば、希望部署に移った後のことまで見据えて努力している人こそ、会社にとっても貴重な存在だと認められるのです。
上司や人事に異動の意志を伝えている
異動で成功する人は、自分の異動希望を適切に周囲へ伝えている点も共通しています。
会社に社内公募制度がある場合は自らエントリーし、そうした制度がない場合でも上司や人事に「将来的には○○の仕事に挑戦したい」という意思を日頃から相談しています。
黙っていては周囲は本人の希望に気づけないため、チャンスを得るためには自己アピールも必要です。
もちろん、タイミングや伝え方には配慮が要りますが、上司に自分のキャリア志向を理解してもらうことで、いざ人事異動の検討が行われる際に真っ先に候補として名前が挙がる可能性が高まります。
実際に希望を通す人ほど、「〇〇の仕事にチャレンジしたいと上司に伝え、人事部とも面談していた」など、周囲への根回しをしっかり行っているものです。
社内ネットワークを築きチャンスを逃さない
さらに、社内での人脈づくりに積極的でチャンスを逃さないことも成功者の特徴。
異動でキャリアアップする人は普段から希望部署のメンバーとも交流し、信頼関係を築いています。
また社内の動向に敏感で、組織再編や公募の情報などチャンスになりそうな場面を見逃しません。
実際、「異動先とのコネ」を作っておくことで希望が通りやすくなる場合もあります。
社内ネットワークが広ければ、自分の評判や強みが希望先部署の責任者に伝わっていたり、内部募集の情報をいち早くキャッチできたりと有利に働くことが多いのです。
反対に、人付き合いが悪く社内で孤立しているような場合は異動の候補に挙がりにくくなるため、日頃から社内コミュニケーションを大切にすることが望ましいでしょう。
社内異動が難しい場合は前向きに転職を検討しよう
社内異動によってキャリアアップできるのが理想とはいえ、現実には誰もが思い通りに異動できるわけではありません。
上記のような努力をしても、会社の状況やタイミングによっては希望が叶わないこともあります。
ここからは、社内で望む異動が難しい場合に視野に入れたい「転職」という選択肢について、前向きな捉え方と具体的なポイントを解説。
社内異動に固執しすぎず柔軟にキャリアを考えることで、新たな道が開けるかもしれません。
社内異動が難しいケースとサイン
まず、自分の置かれた状況で社内異動が実現しにくいケースかどうかを見極めましょう。以下のような状況に心当たりがある場合、社内でのキャリアチェンジが難航する可能性があります。
会社に異動制度や受け入れ枠がない
そもそも社内公募制度やジョブローテーションの仕組みがなく、人材配置の柔軟性が低い企業では、社員が希望して部署を移るのは難しくなります。
企業によってはジョブローテーション自体が存在しなかったり、部署間の人事交流がほとんど行われない場合もあります。
特に中小企業などでは、異動できるポジションが社内に無いというケースもあるでしょう。
希望する部署への異動前例がない
自分が望む部署に社内で人が移った例が過去に全くなければ、前例を作るのは容易ではありません。
会社として特定部署間の人材異動を行わない方針であったり、組織の構造上、希望部署へのルートが閉ざされていることも考えられます。
現部署で実績を出してもポストが空かない
十分な成果を上げて会社に貢献していても、組織の都合で希望部署にポストがなく、将来的にも異動できる見込みがない場合、社内でいくら待っていても状況が変わらない可能性が高いです。
「結果は出しているのに、何年待っても希望の部署に行けそうにない…」という場合は要注意です。
上司や人事の理解・協力が得られない
希望を伝えても直属の上司が消極的だったり、人事部門が全く取り合ってくれない場合もあります。
その結果、本人が望まない部署に長く留め置かれてしまうケースもあるでしょう。
異動を待ち続けることのリスク
社内異動の機会をただ待ち続けることには、いくつかのリスクがあります。
例えば、やりたい仕事に携われないまま年数だけが過ぎてしまい、貴重な時間を浪費してしまう可能性があります。
会社任せで現状に留まり続けていると、自分の成長の機会を逃し、いざ転職しようとしても強みになる経験が不足している状況に陥りかねません。実際、「今の配属先で結果を出したとしても希望するポジションへの異動が見込めないようであれば、転職を検討したほうが良い場合があります」という指摘も。
社内異動に固執しすぎることは、自身のキャリアを停滞させてしまうリスクになり得るのです。
転職を視野に入れることのメリット
では、社内異動が難しい場合に転職に目を向けると、どんなメリットがあるでしょうか。転職という選択肢を検討することで、自分のキャリアに新たな可能性が開けます。
社内にこだわらず外の市場に目を向ければ、今の会社では得られない理想に近いポジションや成長機会が見つかるかもしれません。
転職の方が短期間での昇進・昇給を実現しやすく、好待遇に巡り合えるチャンスも多いのもまた事実。
さらに、新しい環境に飛び込むことで刺激を受けて自身の市場価値を再認識できるのもメリットです。
社外での経験や新たな出会いを通じて視野が広がり、今までにない成長につなげることができるでしょう。
前向きな転職活動を進めるポイント
実際に転職を考えたとき、前向きに活動を進めるために押さえておきたいポイントがあります。
●キャリアの目標を明確にする
次の職場で実現したいことや身につけたいスキルをはっきりさせましょう。
軸が定まれば、転職先に求める条件や優先順位も見えてきます。
●現職で培った強みを整理する
これまでの経験で得た知識や実績を書き出し、自分の強みを再確認します。
それを新しい職場でどう活かせるか言語化できれば、転職市場で効果的にアピールできるでしょう。
●志望理由はポジティブに伝える
転職面接でも、退職理由がネガティブな印象に終始しないよう注意が必要です。
「◯◯に挑戦したい」「◯◯のスキルを活かして貢献したい」といった前向きな動機を伝える方が好印象につながります。
自分の成長意欲やビジョンを具体的にアピールしましょう。
●情報収集と専門家の活用
求人情報や業界動向を幅広く調べ、自分の視野を広げておきます。
また、転職エージェントなどプロの力を借りれば、客観的なアドバイスを得られたり非公開求人を紹介してもらえたりする場合もあります。
なお、在職中に転職活動を行う場合は、現職での責任も最後まで果たし、できるだけ円満に退職できるよう心がけることが大切。
前向きな姿勢を貫きつつ、周囲への感謝を忘れない態度が次のステージへの良いスタートにつながります。
転職の相談のタイミングについては以下の記事も参考にしてください。
「転職についての相談をするならいつがいい?転職を相談するときの適切なタイミング」
キャリアは自分で切り拓く:前向きな選択を
社内異動にせよ転職にせよ、最終的に自分のキャリアを切り拓くのは自分自身の行動と決断です。
社内異動で成功する人も自らの努力とアピールでチャンスを掴んだように、たとえ異動が難しい状況でも決して悲観する必要はありません。
視点を変えて外の世界に目を向ければ、あなたを必要としてくれる場所がきっと見つかります。
大切なのは、環境のせいにして立ち止まるのではなく、自分の成長のために前向きに動き出すこと。
皆さんのキャリアについて考え、一歩踏み出すきっかけになれば幸いです。
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